何故、労働時間を把握する必要があるのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

企業の経営者様、または人事労務担当者様、こんにちは!

「従業員の労働時間管理」は、単なる事務作業だと思っていませんか?実は、労働時間の正確な把握は、日本の法律である**労働基準法(労基法)労働安全衛生法(安衛法)**という、2つの強力な柱に支えられた「企業経営の根幹」に関わる重要な義務です。

この記事では、なぜ労働時間の把握が不可欠なのか、2つの法律が求める視点からわかりやすく解説します。


柱①:労働基準法が求める「正当な対価の支払い」と「規制の遵守」💴

 

労働基準法の主な役割は、労働者の労働条件の最低基準を定め、保護することです。この法律から見ると、労働時間把握は「お金」と「ルール」を守るための必須ツールです。

1. 賃金トラブルの回避(割増賃金の算定)

 

労基法第37条は、従業員に法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて働いてもらった場合、あるいは深夜(22時~5時)に働いてもらった場合に、「割増賃金(残業代)」を支払うことを義務付けています。

正確な労働時間記録がなければ、残業時間や深夜労働時間を客観的に確定できません。

📌 リスク: 労働時間を曖昧にすると、未払い残業代が発生し、従業員とのトラブルや、労働基準監督署による是正勧告、さらには罰則を受ける可能性が高まります。

2. 罰則付きの上限規制の遵守

 

「働き方改革」により、時間外労働(残業)には罰則付きの明確な上限が設定されました(原則、月45時間・年360時間など)。

労働時間をリアルタイムで把握していれば、「今月、Aさんの残業時間が上限に近づいているな」とチェックでき、長時間労働を未然に防ぐための業務調整や指示出しが迅速に行えます。


柱②:労働安全衛生法が求める「従業員の健康確保」🏥

 

労働安全衛生法(安衛法)の視点は、労基法とは異なり、「従業員の健康」に焦点を当てています。長時間労働は心身の健康を損なう最大の要因の一つだからです。

1. 過重労働者への「面接指導」の義務付け

 

安衛法には、長時間労働によって疲労が蓄積し、健康障害のリスクが高い従業員を保護するための規定があります。特に重要なのが「面接指導」です。

🩺 面接指導の目安: 時間外・休日労働が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる従業員に対しては、医師による面接指導を実施することが事業者に義務付けられています(一部の業種・役職者を除く)。

この「月80時間」というラインを超えるかどうかを判断するためには、当然ながら、労働時間を正確に、かつ客観的に記録していることが大前提となるのです。

2. 健康リスクの早期発見と防止

 

労働時間が「見える化」されることで、特定の部署や個人に負担が集中していないか、潜在的な健康リスクをいち早く察知できます。

健康を害してからでは手遅れです。安衛法は、企業に「労働時間という客観的なデータ」に基づき、従業員が病気になる前に手を打つという安全配慮義務を徹底するよう求めているのです。


まとめ:労働時間把握は「守り」と「攻め」の経営戦略

 

労働時間の把握は、単に法律で定められているからやる、という「守り」の姿勢だけではありません。

  • 労基法の観点:法令違反や賃金トラブルを避けるための**「リスク管理」**

  • 安衛法の観点:従業員の健康を守り、生産性を維持・向上させる**「攻めの投資」**

とも言えます。タイムカード、ICカード、PCのログイン・ログオフ記録など、客観的な方法で労働時間を正しく記録し、健康経営を実現していきましょう!


ご不明な点や、具体的な管理方法についてのご相談があれば、いつでもお気軽にお声がけください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.