社長およびその同居家族、役員と労災保険

   

労災保険は労働者に対して補償をします

労災保険による補償を受けられる人(労働者)は労働基準法で規定されている労働者で、「職業の種類をとはず事業に使用される者で、賃金を支払われる者」です。ここで、「使用される者」とは他人の指揮命令の下で労働する者です。「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称に関係なく労働の対象として使用者が支払うものすべてを言います。

従って、正規労働者だけで無くアルバイト、パート、日雇い労働者、季節労働者などで有ってもすべて、労働者と見なされます。

それでは、よく問題となる次の方々は労働者となるかどうかについて考えていきましょう。

会社役員

営業部長、総務部、経理部長などは取締役を兼ねている場合が多くありますが、これらの方々は労災事故が発生した場合保護の対象になるでしょうか?

株式会社の取締役であっても、定款等の規定による業務執行権を有する者以外の者で事実上の業務執行兼を有する他の取締役の指揮、監督を受けて労働に従事して、その対象として賃金を受けている者は、原則として労働者として取り扱われます。しかし、法人の機関構成員としての業務に従事している間に生じた災害については労災保険の給付対象とはなりません。

監査役や理事についても事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は労働者として取り扱われます。

結果として、労働の実態(労働者としての身分を有して労働者としての仕事をしている)および報酬の性質により判断されることとなります。

昭和23年3月17日基発第461号、昭和34年1月26日基発第48号

同居の親族

店主(つまり代表取締役)とその奥さんだけで営業している商店で奥さんが仕事時間中にケガをした場合労災保険は適用されるのでしょうか?労災保険はアルバイトでもパートでも事業主との間に労働関係が認められる限り労働者となりますが、労働基準法が同居の親族のみを使用する事業場、および家事使用人には適用されないことになっているため、労災保険法も適用されません。

同居の親族がその事業場で労働者として働いていたとしても事業主と利益を一にしており、事業主と同一の地位にあると考えられているためです。

しかし、同居に親族であっても常時同居の親族以外の労働者を使用する場合において、労働に従事し事業主の指揮命令に従って労働していることが明確で、労働時間の管理、賃金の決定・支払いから見て、他の労働者と同様の就労実態であると言うことであれば労働者となります。

在宅勤務者

最近増えているのが在宅勤務をする方です。多様な働き方の推進と相まって今後も増えてくるものと予想されています。在宅勤務の場合はどこまでが労働でどこからが労働で無いのかはっきり区別をつけることは難しいところが有りますが、昭和60年に労働基準法研究会報告「労働基準法の労働者の判断基準について」が示されています。扱いが労働者と比較してどうか。というところが問題になるようです。労働者に当たるかどうかの具体的判断は

使用従属性が有るかどうか。

使用者の具体的な仕事の依頼、業務従事の指示に対して拒否することを認められていれば指揮監督関係を否定する要素となる。(労働者では無い)。拒否する事由を有しない場合は指揮監督命令の下に従事していると考えられる。その場合には事実関係だけでは無く契約関係も勘案して決定する。業務の内容および遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けていることは指揮命令下にあることを示す重要な要素ではある。しかし、通常発注者がが行う程度の指示ではそうとはいえない。

勤務する場所や勤務時間が指定されている場合には指揮命令下にあることを認めうる重要な要素ではある。しかし、業務の性質、安全性の確保の点から指定されている場合には必ずしもそうとはいえない。

本人に変わって他の労働者が労務を提供することが認められている場合、もしくは本人の判断により補助者を使うことが認められている場合は指揮命令下にあるとはいえない。

報酬が時間給で計算されるなど労働の結果による格差が少ない、欠勤した場合は応分の控除がある。残業手当等が支給される等々報酬の性格が使用者の元で一定時間労務を提供していることの対価と判断される場合は使用従属関係が認められる。

労働者性があるかどうか

本人が所有する機械器具が著しく高価な場合は自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者と認められる。

報酬の額が当該事業に従事している正規の従業員と比較して著しく高額である場合は、当該報酬は事業者に対する代金の支払いと認められ労働者性は否定される。

他社の業務に従事することが制度上制約され、また、時間的余裕も無く、事実上困難である場合は専属性の程度が高く労働者性を認められる。

報酬に固定給部分がある、事実上固定給となっている。その額も生計を維持しうる程度の者である場合は労働者性を認めうる。
司法の判断では

  1. 採用、委託との選考過程が正規従業員とほとんど同じである。
  2. 報酬について給与所得として源泉徴収を行っている。
  3. 服務規定を適用している。
  4. 労働保険の適用対象としている

など使用者が労働者であると認識していると推定される場合労働者性があるとしている。
在宅勤務者が労働者であるかどうかは労務の提供の形態、報酬の労働との対償性などで総合的に判断されます。

そして、在宅勤務者が労働者であると認められた場合でも、自宅内で(作業場所内)でのケガが労災に当たるかどうかは「業務遂行性」と「業務起因性」により判断されます。

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