労災保険のメリット制

労災保険を使うと必ず保険料が上がると思っていませんか?

労災保険率は事業の種類ごとに定められており、業務災害の発生防止努力を促す意味を含めて事業所ごとに保険料を上下させています。これをメリット制と言います。労災を1件でも発生させてしまうと直ちに労災保険料が上がってしまうと勘違いしている方も多いのですが、メリット制の適用には会社の規模と事業の継続性等の要件があり、すべての事業所で適用されるわけではありません。なお、メリット制が適用される場合は、年度更新時に労働保険料申告書といっしょに「労災保険率決定通知書」が送付されることになっています。

労災保険料

労災保険の保険料は事業の支払う賃金総額に労災保険料率を乗じて計算します。が請負による建設の事業や立木の伐採などの特殊な事業は請負金額の労務費率をかけたものに労災保険料率を乗じて計算します。

労災保険料の計算

メリット制

メリット制とは要件を満たす個々の事業について、その事業の労働災害の多寡によって一定範囲内で労災保険料率または労災保険料を増減させる制度のことです。つまり、労働災害の少ない事業主には労災保険料の減額を行い、逆に労働災害が多い場合は労災保険料の増額を行うという制度です。メリット制は「労働災害の発生頻度に基づく労災保険料の増減」することによって事業主の労働災害防止努力を喚起し、労働災害を減少させることを目的としています。また労災保険料率は「事業の種類」ごとに定められていますが、同じ事業の種類に属していても作業工程、使用する機械工具などの事業主の災害防止努力によって、労災発生率は大きく異なるため、メリット制により同一業種の事業主間での負担の公平をはかるという機能を持っています。

メリット制の適用(どうして、すべての事業が対象にならないのか)

メリット制は事業主の労働災害防止努力を保険料に繁栄させていく事を目標としています。ここで、1%の労災発生率であると仮定してみると従業員数1000人の企業では1年間に10人の方が労働災害に遭遇することになります。従って、労災に遭遇する人の数が10人より多いか少ないかで事業主の労災防止努力を計る事ができますが、従業員10人の企業では10年に一人しか労働災害に遭いません。この場合、労災発生が0でも事業主が労働災害防止努力をしているかどうか判断できません。従って、メリット制を適用するためにはある程度の従業員数が必要になります。

継続事業のメリット制の適用

継続事業では個々の事業について事業の種類ごとに定められた労災保険料率から通勤災害などの非業務災害率(全業種一率に0.6/1000)を減じた額をメリット収支率に応じて定められている増減率(最大±40%、有期事業の一括の場合は±35%、有期事業で規模が小さいものについては±30%)で増減させ、その増減された率に非業務災害率0.6/1000を加えて率をその事業の労災保険率します。
つまり、継続事業については労災保険料率を上げ下げすることによって保険料の上げ下げをしています
継続事業のメリット制の適用を受けるには次に掲げる「事業の継続性」と「事業の規模」の2つを同時に満たすことが必要です。なお、有期事業の一括がなされている事業についてもこの「継続事業のメリット制」が適用になります。

「事業の継続性」

メリット制が適用される保険年度の前々年度に属する3月31日(以下基準となる3月31日とする)現在において、保険関係成立後3年以上経過していること

「事業の規模」

基準となる3月31日の属する保険年度から過去にさかのぼって連続する3保険年度中の各保険年度において次の要件のいずれかを満たしていること

  • 100人以上の労働者を使用していること
  • 20人以上100人未満の労働者を使用する事業では、その使用する労働者数にその事業が該当する事業の種類の労災保険料率から非業務災害率を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの。すなわち

労働者数×(労災保険率-非業務災害率)≧0.4
ここで非業務災害率は徴収法により0.6/1000と規定されています。

一括有期事業のメリット制の適用条件

有期事業の一括が適用されている建設および立木の伐採事業については確定保険料の額が40万円以上である事業にはメリット制が適用されます。

従って、3保険年度のうち1保険年度でもこの事業の規模の要件(確定保険料額が40万円以上)を満たさない場合はメリット制は適用されません。

継続事業のメリット制における労働者数の考え方

継続事業のメリット制が適用されるには一定以上の労働者数を有していることが必要ですが、この労働者数には、日雇い労働者やパート労働者なども含むため常に一定とは限りません。労働者数の数え方は次の決まりによります。

  1. 船きよ、船舶、岸壁、波止場、停車場または倉庫における貨物の取り扱いの事業においては、当該保険年度中に使用したのべ労働者数を所定労働日数で除して得た数
  2. それ以外の事業にあっては、当該保険年度中の各月の末日(賃金の締め日がある場合にあっては各月末日の直前の賃金締め日)において使用した労働者数の合計を12で除して得た数