手待ち時間とは何か
手待ち時間とは、作業と作業の合間の時間や商店などでお客様が来るのを待っている時間など、一見休憩しているように見えるが、何かあったときは対応しなければいけない時間のことで、休憩時間では無く労働時間と見なされるのが一般的です。
1.客待ち時間
休憩時間と定められていても、労働者の自由に時間を使えるわけでは無く「お客様が来店した場合には応対しなければならない」場合は休憩時間ではなく、手待ち時間とされます。実際には誰も来店しなかったとしても労働時間となります。
2.仮眠時間
夜勤などで就業時間中に仮眠時間が含まれている場合、仮眠時間中の行動に関して何の指示も無く、休憩時間と同様に労働者が自由に行動できる場合は、休憩時間となります。
しかし、仮眠時間中であっても「何かあった場合には対応しなければならない」場合や休憩室など一定の場所にいることを強制されている場合など、仮眠時間が労働時間となる場合があります。
「仮眠時間に労働者が労働から離れることを保障されている限り労働時間では無いと判断できる 」との一般論を示し、ビル管理会社の従業員が勤務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が決まっていることや、仮眠中も突発事態への対応をしなければならないこと理由に労働時間に当たるとする判例があります。(大星ビル管理事件 最高裁 平14.2.28)
裁判例や行政解釈において労働時間として認められた手待時間としては次に挙げるものが代表的なものです。
タクシー運転手の客待ち時間
タクシー運転手の客待ち時間も、たとえそれが30分を超えるものであっても使用者の指揮命令に従わなければならず、使用者の指示があればいつでも労働の提供ができる状態にあったのであるから労働時間であるとされています。(大分地判平成23年11月30日・中央タクシー割増賃金請求事件判決)。
貨物積込業務における貨物の到着待ち等の時間
昭和33年10月11日基発6286号は「貨物の積込係がトラックの到着を待機している時間は、出勤してその場所にいなければならないので、労働時間である」として、又、トラック運転手がトラックに貨物が積み込まれるのを待機している時間も「貨物の積込を行う以外の時間には全く労働しないでも、同じ理由により労働時間と解すべきである。」としています。
3.電話番の時間
昼休み中の電話番や来客対応について、厚生労働省は「労働時間に含まれる」と示しています。机や電話のそばから離れることができないため実際には退屈しのぎに新聞・雑誌を読んでいたとしても労働時間となります。
昼休みに、交替で従業員が自席で昼食を取りつつ、電話番と来客応対をしている場合、実際には来客もなく、電話もかかってこなかったとしても「手待時間」として労働時間となります。(昭和23年4月7日 基収1196号、昭和63年3月14日 基発150号、平成11年3月31日 基発168号)
4.物品の運搬・運送
出張の目的が物品の運搬であるなど、使用者の指揮命令下にある場合は労働時間に含むものとされます。
運転手が2名で交互に運転にあたる場合に、運転しない者が助手席で休息又は仮眠している場合は手待時間ですから、労働時間とされます。
手待ち時間と労働時間の境目
「手待ち時間」と「休憩時間」の判断がどこで分かれるかと言えば、もうおわかりかと思いますが、使用者の指揮命令下から完全に離れ、労働者が自由に利用できる時間であれば休憩時間そうで無ければ手待ち時間としてたとえ休憩しているように見えても労働時間とされ賃金を支払う必要があります。