有給休暇の買い取り

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有給休暇の買い取りは違法です。

有給休暇の買い取り

会社に長く勤めていると結構有給休暇ってたまってしまいますよね。2年たつと時効で無くなってしまうので買い取ってくれれば労働者側としてもうれしい気もします。ですが、残念なことに有給休暇の買い上げは労働基準法で禁止されているんです。さて、なぜでしょう?どうせ無くなってしまうものを買い取ってもらえるなんて労働者にとってはいいことではないでしょうか。労働基準法は使用者の味方なのでしょうか?

日本の有給休暇の取得状況

エクスペディア・ジャパンによる有給休暇の国際比較調査の結果(2018年12月発表)によると日本は3年連続の最下位(取得率50%程度)日本では有給休暇を取得しきれずに余った状態でいることがわかります。有給休暇の時効は2年ですから、2年間取得できなければ消滅してしまいます。そう考えると有給休暇の買い取りは労働者にとってもメリットがあるように思えます。労働者が会社に有給休暇の買取りを請求した場合、会社は買い取る義務はあるのでしょうか。みていきましょう。

有給の買い上げは労働基準法39条違反となります

年次有給休暇の買い上げは法律で禁止されているのはなぜでしょう。そもそも、有給休暇とは本来、労働者が自分の好きな時季に休暇を取ることができるというものです。ただ、せっかく休暇がとれても、その間の給与が支払われないのであれば休暇を取ろうとする労働者もいなくなってしまいます。そのため、休暇をとっても会社は給与を支払いますよ、というのが年次有給休暇というわけです。

つまり、有給休暇とは休暇をとることが主目的であり、その日に給与を支払うのは付随するものなのです。この有給休暇の趣旨に照らしてみれば、有給を買い上げて労働者が休暇を取れなくなってしまうのは、本来の有給の趣旨では無いと言うことが簡単にわかるでしょう。

ここで、有給休暇に関する法律の規定を簡単に再度確認しておきましょう

年次有給休暇は「労働者の疲労回復、健康の維持・増進、その他労働者の福祉向上を図ること」を目的として法律に定められています。(労働基準法第39条)
そして、請求することのできる日から2年間の経過により、時効という制度により請求ができなくなってしまいます。(労働基準法115条)
一例として、労働基準法上では、正社員は勤務開始から全労働日の8割以上出勤していれば、勤務期間が6か月経過した時点で会社に対して年10日間の有給休暇請求権を取得します。しかし、権利を行使せずその日から2年間が経過した場合、その有給休暇請求権は時効により消滅してしまいます。

労働基準法より抜粋

この後の話のために便宜的に有給休暇を法定有給休暇と任意有給休暇に区別することにします。それぞれの定義は法定有給休暇とは一般に言われている有給休暇で労基法に定められているものを言います。任意有給休暇とは会社によって福利厚生の向上のために定められている有給休暇を言います。

 

法定有給休暇の付与

 

正社員

正社員は、全労働日のうち8割以上出勤することと、一定期間継続して勤務することにより有給休暇が与えられます。具体的には、6か月間の勤務により10日間の有給休暇が与えられ、その後1年継続して勤務する毎に新たに有給休暇が与えられ、しかも毎年その日数が増えるという仕組みになっています。

パート・アルバイト

パートなどの所定労働日数が少ない労働者に対しても、有給休暇は付与されます。この場合は、週の所定労働日数などに応じて有給休暇が付与されることになります。

会社は有給休暇買取る義務はありません

有給休暇とは、労働基準法に定められているとおり「労働者の福祉向上のため」に休暇を取ってもお給料は支払いますよ。といった制度であり、これを消化しなかった場合に会社が何らかの補償をするといったことはありません。会社に有給休暇を買取る義務はありません。

会社からの有給休暇買取りは原則違法だが、そうでない場合もある

会社からの働きかけによる買取りを認めると、労働者に休暇を取得させないために会社が有給休暇を買い取る事が可能になります。これでは法律の趣旨に反してしまいます。よって、会社からの有給休暇の買取りは原則として違法とされています。(禁止されています)

会社が有給休暇を買取っても違法ではない場合

買い取りをしても労基法違反にはならないといった意味で、積極的に買い取りをすべし、あるいは労働者には、買い取ってもらう権利があるというわけではありません。

法定有給休暇を超えた分について買い上げる場合

会社が法律で定められている分を超えて付与している場合。

仮に法定の有給休暇が年10日間付与される労働者に、年20日間の有給休暇を付与しているような会社の場合は10日間を会社独自に上乗せしていると考えられるので、その上乗せ分を買い取っても「労働者の福祉の向上」といった法の趣旨に反するものではありません。会社の自由裁量で買い取ったとしても法違反にはなりません。ただし、一緒に法定付与分まで買い取ってしまうことはできません。

有給休暇が時効消滅した場合

取得する権利が時効消滅した有給休暇は、もう取得することはできませんので買い取っても労働者の有休は減りません。従って、「労働者の福祉」に反するものとは考えられませんので、買い取っても労基法違反とはなりません。

退職時に未消化有給休暇がある場合

退職時に未消化有給休暇がある場合は、退職すると未消化有給休暇を消化することができなくなってしまうので、「有給休暇の時効消滅」と同様に考えて、特別に有給休暇を買い取ることも違法では無いとされています。

買取りに応じる企業は少ない

有給休暇の買取りは原則違法であるので、たとえ適法な範囲であっても違法ではないかという誤解を招きかねません。わざわざ誤解を招くことを避ける方が賢明です。

また、個別に対応することは不公平な状態を招きかねませんので、制度として規定する必要があると考えられますが、文章の書き方次第では違法として指摘を受けることも十分考えられます。わざわざこんな事をしようとする事業主は少ないでしょう。

さらに、世の中の流れとしては有休を消化するように制度化する方向に進んでいます。2019年4月1日からは有給休暇5日は最低取得するように義務づけされました。

以上勘案して、労働者の側としては有給買い取りをしてもらうことを狙うよりは取得できる環境を構築してもらうように働きかけましょう。事業主の方は人手不足の折、採用がよりやりやすくなると思われますので、そういった環境を整えアピールしていきましょう。

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