有給の計画的付与は有給の5日付与義務化に有効

      2019/09/26

有給休暇

有給休暇とは、簡単に言うと「賃金の保障された一定の日数の休暇」を付与することによって、 労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的とするものです。(有給休暇の詳しいことは「有給休暇とは」を参照)

年次有給休暇は一番多くなると1年で20日付与され、それが翌年まで繰り越すことが可能なので、理論上は最大40日まとめて休むことができます。そしてこれが現実的に起こるのが、退職時です。40日を一気に使うとほぼ2か月分、会社は労務の提供ない相手に対し賃金を支払わなければなりません。(退職時に請求された有休に対しては会社は時季変更権(業務上支障があるからといって他の日に有休を変更してもらう権利)を行使出来ません。)

これは企業にとって(特に中小企業)には大きな問題です。そこで、対策としておすすめなのが年次有給休暇の計画的付与ですが、なんとこの計画的付与は有給休暇5日取得の義務化にも有効なんです。

計画的付与で会社の指定する日に社員に有給を与える

計画的付与とは年次有給休暇の5日を超える部分の取得日を決めて取得させる制度のことです。(労働基準法39条第5項)「計画的付与」は労働者各人の付与日数のうち5日を超える部分について「労使協定」を締結することにより、計画的に与えることができます(この協定は、届け出不要です)。前年度と今年度合わせて40日分の有給がある労働者の場合、最大で35日分を計画的付与することができます。今年から始まった「働き方改革」による有給休暇5日取得の義務化ですが、労働者が自発的に有休を取れる環境にある会社はそれで良いのですが、なかなか有休の消化が進まない職場においては、この有給休暇の計画的付与は有効な方法です。
たとえば、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始といった大型連休の実現に年次有給休暇の計画的付与が利用できます。この制度は、年休の取得を促進し、年間労働時間を短縮することに大きく貢献しています。但し、現在会社休業日として、大型連休を実現している場合それを、有休に切り替えてしまうと「労働条件の不利益変更」と見なされる可能性が大きいので慎重に事を運ぶ必要があります。

「年5日有給休暇を与えることの義務化について絶対やってはいけないこと」参照(現在編集作業中に付きリンク切れ中)

計画的付与の方法

1)社員全員一斉に取得させるもの、2)グループごとに取得させるもの、3)個別に取得させるものの3方式があります。

社員全員一斉に取得させるもの

例えば、GWの飛び石連休などの労働日を計画年休とし、会社全体で休日とするものです。
この場合、対象者のうち年休日数のない(少ない)者には、有給休暇を特別に与えるか、労働基準法26条に定められた休業手当を支払うかのいずれかをする必要があります。

課、班別などのグループごとに取得させるもの

労働者をA班とB班に分け、A班は8月1日から5日まで、B班は8月6日から10日までというように、交代で年休を取得するように計画し会社自体は営業するというものです。
会社は営業しているので、「有休の足りない人は出勤」で対応出来ます。

個人別付与方式

社員に希望を聞き、会社としてのバランスを考え、有休を取得するものです。

有給休暇の計画的付与に関する手続き

計画的付与には就業規則に規定を置き、労使協定を締結することが必要です。

就業規則

就業規則に「付与した年次有給休暇のうち5日を超える部分については、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」などのように定めることが必要です。

労使協定

従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。

労使協定の内容

(1) 計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
(2) 計画的付与の対象日数
(3) 年次有給休暇の計画的付与の設定

  1. 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日
  2. 班別の交替制付与の場合には、班別の具体的な年次有給休暇の付与日
  3. 個人別付与の場合には、年次有給休暇付与計画表を作成する時期、作成の仕方等(実際の有休取得はその表による)
(4) 対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い
(5) やむを得ない事情で、有休指定日を変更する場合の手続き

*時間単位年休は、個々の労働者に対して時間単位による年休の取得を義務付けるものではなく、労働者が時間単位による取得を請求した場合において、労働者が請求した時季に時間単位により年次有給休暇を与えることができるというものであることから、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められません。

計画的付与にあたって次のことを確認しましょう。

計画的付与の対象から除く者

計画的付与の対象期間中に育児休業や産前産後の休業などに入ることがわかっている者、また、定年などあらかじめ退職することがわかっている者については、労使協定で計画的付与の対象からはずしておきます。
なお、特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮するよう指導すること。
(昭和63.1.1 基発1号)

対象となる年次有給休暇の日数

年次有給休暇のうち、少なくとも5日は従業員が自由に取得出来ることが必要です。

計画的付与の効果的活用法

夏休み・年末年始の休暇に組み込み、大型連休としたり、暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、連休とします。そうすることにより、旅行に行ったりする日付を少しずらしたりできます。高速道路の渋滞に巻き込まれるなどの余分なストレスを感じないでゆっくり休むこともできます。又、会社外での社員同士の交流も進みそうです。大きくライフスタイルの変化が生じてくれば、それこそ「働き方改革」の目的に近づいている証拠かもしれません。生活を楽しみつつ、しっかり労働して生産性を向上させるために有休を効果的に使いたいものです。又、業種によっては個々バラバラに有休を取得されると問題が生じる業種やなかなか有休を取得出来ない業種にはおすすめです。

有給休暇をしっかりと取得できる企業として社会から認知されることは、優秀な人材の確保や労働者の定着率の向上につながります。計画的付与を活用しながら、有給休暇の取得を促進しましょう。

有休の取得促進法

日本の有休取得率は50%でエクスペディアの調査対象国では最下位、ワースト2位のオーストラリアでも70%なので大差をつけられています。その理由の一つとして、「他の人に迷惑がかかる」というのがあげられていますが、日本人らしい気配りでしょうか、それでも、計画的付与なら会社としてお休みになるので気兼ねなく休めるのでは無いでしょうか。それ以外にも、従業員本人の誕生日や結婚記念日、子どもの誕生日などを休暇とする、いわゆる誕生日休暇がありますね。これも全員かならず回ってくるのでお互い様でしょう。その他の取得促進策としては、「業務の比較的閑散な時期に年次有給休暇を計画的に付与する」事により業務に支障なく有休取得率を上げることができます。働き方改革で有休取得促進、労働時間の短縮は国策化されている感じですので事業主としては、いろいろ手を尽くして取得率を向上させるように考えなくてはならないでしょう。

 

計画的付与が決定したあとで、使用者の都合で時季変更ができるのか?

労使協定による計画的付与において、指定した日に指定された労働者を就労させる必要が生じた場合であっても、計画的付与の場合には第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない。

(昭和63.3.14 基発150号)

すなわち、使用者は「請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる」という事情があった場合も、計画された年休の時季を別の時季に代えることができないとされています。計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます。

労働者都合による変更

労使協定の中に特段の定めがなければ、個別に対応することになります。

年休の日数が不足する労働者の場合

計画年休に充当する年休日数が不足する労働者には、「付与日数を増やす等の措置が必要」としています(昭和63.1.1 基発1号)

計画的付与が原因である有給休暇日数の足りない労働者の欠勤は、労基法26条に規定する「使用者の責に帰すべき事由」による休業として取り扱われます。
「足りない分の日数を別に付与したり、計画的付与の対象外にする等の措置」をとらずに当該労働者を休業させる場合には、労働契約や労働協約、就業規則等に基づき、賃金、手当等の支払を定めているときは、当該労働契約等に基づき当該手当等を支払う必要がありますが、そうでない場合であっても、少なくとも労働基準法第26条の規定による休業手当の支払(平均賃金の100分の60以上)が原則として必要です。

つまり、労働者は使用者に対して、休業手当(平均賃金の100分の60)を請求することができることになります。(昭和63.3.14 基発150号)

 お問い合わせはこちら

あなたにお勧めの記事

働き方改革と社労士 1
働き方改革と社労士~その1~

働き方改革と中小企業 中小企業の経営者にとって働き方改革は、結構頭の痛い問題とな ...

 - 働き方改革, 有給休暇