割増賃金の計算方法

      2019/06/19

正しい割増賃金の計算方法

割増賃金、そう残業代のことです。

割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間数×割増賃金率

どこにでも見かける公式です。では、1時間当たりの賃金額はどのようにして算出するのでしょうか?
実は労働基準法に定められています。

月給の場合

通常は月毎に所定労働時間が違いますから、計算が煩雑になってしまいます。そこで、多くの場合1年間を平均した「1カ月間の平均所定労働時間」を用います。
給与の額は、1ヶ月の所定労働日数を勤務した場合に支給される給与・手当の合計です。

一般に基本給(職能給、職務給、年齢給など)、皆勤手当、食事手当、資格手当、運転手当、役職手当などは含まれますが、
次のものは除外されます。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時給与、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる給与
(名称に関係なく、実質的な支給内容がどうなっているのかで判断します)
参照「割増賃金の計算に含まれない賃金がある」

それでは、実際に残業代の基礎になる時間単価を計算します。

1カ月平均の所定労働時間数を算出するにあたり、1年間の所定労働日数を出します。
1年間の所定労働日数は、所定休日の日数の合計を1年(365日または366日)から引いて算出します。
所定休日とは、カレンダーの赤い部分でなく、会社の社内カレンダーの休日です。
月平均所定労働時間を計算します。
1ヶ月平均の所定労働時間数=1日の所定労働時間×1年間の所定労働日数÷12ヶ月
時間単価を計算します。
1時間あたりの賃金額=給与・手当の合計額÷1カ月平均の所定労働時間数
1時間あたりの金額に超過した時間数と労働基準法の割増率を掛ければ計算できます。
割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間数×割増賃金率

 

割増賃金率

法律で定められている割増賃金率は

  • 時間外労働・・・・・25%以上(1ヶ月60時間を超えるときは50%以上(*1))
  • 休日労働・・・・・・35%以上
  • 深夜労働・・・・・・25%以上

*1中小企業については当分の間25%以上

おわかりのように「以上」なのでこれ以上支給しても良いのです。なかなか余計に出すところはありませんが。時間外労働が休日に行われた場合はそれぞれの割増率を加算して60%以上、深夜時間帯(午後10時から午前5時)の時間帯に行われた場合は50%以上の支払いになります。

出典「割増賃金の計算に含まれない賃金がある」

割増率が変わらない中小企業は、以下の条件に該当する企業です。

小売業 資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者50人以下
サービス業 資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者100人以下
卸売業 資本金1億円以下、または、常時使用する労働者100人以下
その他の事業 資本金3億円以下、または、常時使用する労働者300人以下

計算例

算出条件

基本給   330,000円
家族手当  15,000円
通勤手当  10,000円

年間の所定休日 120日(労働カレンダーによる)
1日の所定労働時間8時間(就業規則による)
時間外賃金の割増率25%(就業規則による)

計算例

1ヶ月平均の所定労働時間数
=8時間×(365日−120日)÷12ヶ月
=163.33時間/月

時間数は、小数点以下1桁あるいは2桁までで良いと思います。実際は、就業規則・賃金規程の規定により確認してください。

1ヶ月の給与・手当の合計額(算定基礎額)
基本給:330,000円

通勤手当と家族手当は、算定基礎額に含めません。就業規則(賃金規定)で確認します。手当によっては算定に含めるものがあります。

1時間当たりの単価
330,000円/163.33時間=2,020.44円

1時間当たりの時間外手当(通常の残業代の単価)
2,020.44円×(100%+25%)=2,525.55円=2526円(1円未満4捨5入(原則)、規定により切り上げ可)

ここまでは1年間同じですから一度算出しておけば1年間使えます。

ここで計算した残業代単価に時間数を掛ければ、その月の残業代が出ます。
例えば、残業時間が25時間の場合は、次のような計算になります。

  • 残業代単価2,525.55円の場合 2,525.55円×25時間=63,138.75円 →切り上げて、63,139円
  • 残業代単価2526円の場合 2,526円×25時間=63,150円

この例でおわかりのようでどの時点で数字を丸めるかによって支給額は変わってきます。(1円未満は支給できませんので)

時間給・日給の場合

時間給・日給の場合は、月給の場合より簡単です。

時間給の場合、時間単価=時間給です。

日給の場合は、時間単価は、日給の額を所定労働時間数で除して算出します。
日給が8000円、所定労働時間数が8時間であれば、時間単価は1000円です。

時間給だから、1日8時間を越えて働いても、同じ時給ではありません。
時給が800円ならば、8時間を超えた場合の残業代は800円×(100%+25%)=1000円/時です。
ここで注意が必要です。一日の労働時間8時間未満のパートさんの場合8時間を超えなければ残業ではありません。通常の賃金となります。

深夜になった場合は、割増率が更に+25%以上加算されます。

 休日労働の場合

休日に働いた場合は、働いた時間は全て残業時間になります。そして、その休日が法定休日かどうかによって割増率が異なります。

法定休日に法定休日に残業した場合、残業時間に1時間あたりの賃金額を掛けて、その上さらに35%の割増率で、残業代を計算します。
深夜残業にも該当する場合は、割増率を35%ではなく60%(法定休日の割増率35%に深夜時間帯の割増率25%をくわえたもの)として、残業代を計算します。

法定休日以外の休日に残業した場合は、通常の勤務日における残業の場合と同じです。この場合、25%の割増率で残業代が計算されることになります。

法定の時間内の残業の場合

所定労働時間は、会社との雇用契約や就業規則で決まります。この所定労働時間は、1日8時間、1週間で合計40時間の法定労働時間より短く定められている場合があります。
このような場合、所定労働時間分は超えているが、法定労働時間は超えていない残業が発生しうることになります。例えば、週に20時間働く契約にもかかわらず、週に30時間働いたような場合です。このような法定労働時間の範囲内で所定労働時間分を超えた残業のことを、「法定内残業」といいます。この場合、法定労働時間を超えた残業とは異なり、法定内残業の場合は25%の割増率を掛けることはありません。単純に、残業時間に1時間あたりの賃金を掛けて、残業代を計算します。但し、雇用契約や就業規則に決まりがある場合、基本的にはその規定に基づいて残業代を計算します。
法定内残業であっても、深夜残業に該当する場合には、25%の割増率を用いて、残業代を計算します。

変形労働時間制の場合

 

変形労働時間制とは

「変形労働時間制」は、通常の1日8時間、1週間に40時間といった固定的な時間労働するのでは無く、ある期間については短く、またある期間には1日8時間以上または1週間で合計40時間以上働くといったような制度です。

変形労働時間制では、短時間だけ働く期間と長時間働く期間をまとめて、一つの期間と考えその期間を平均して1日の労働時間の規制枠内に収まるように考えます。法定労働時間の総枠は、40時間×清算期間の日数÷7で求められます。

変形労働時間制での残業代の計算方法

変形労働時間制でも、
残業代=残業時間×1時間あたりの賃金×割増率
であることには変わりありません。

残業時間

変形労働時間制でも、所定労働時間(就業規則などで決められた労働時間)を超えた時間が残業時間になります。
法定休日に働いた場合には、働いた全ての時間が残業時間になります。

1時間当たりの賃金の計算

1時間あたりの賃金の計算方法は、通常の勤務体系の場合と同様です。

残業代の割増率

時間外労働の割増率は25%(深夜労働でもある場合は50%)です。

変形労働時間制の時間外労働

  1. 1日について、8時間を超えた部分の労働あるいは所定労働時間が8時間を超える場合は所定労働時間を超えた部分の労働
  2. 1週間について、40時間を超えた部分の労働あるいは所定労働時間が40時間を超える場合は所定労働時間を超えた部分の労働
  3. 変形労働時間制のの対象となる期間について、40時間×その期間の日数÷7で求められる法定労働時間の総枠を超えた部分の労働

変形労働時間制の時間外労働の注意点

中小企業に該当しない大企業においては、1か月あたりの法定労働時間を60時間以上超える部分の残業については、割増率が50%(深夜労働でもある場合は75%)になります。
他方、法定労働時間外の残業には該当しないものの、所定労働時間を超えた部分の残業、すなわち法定労働時間内の残業については、その部分の時間に1時間あたりの賃金を掛けた金額が、そのまま残業代の金額になります。ただし、深夜労働でもある場合は、割増率25%で計算した金額になります。法定休日に働いた時間は、割増率が35%(深夜労働でもある場合は60%)になります

所定労働時間の算定方法が違っている以外通常の労働と同じ扱いですね。

 

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制とは

「フレックスタイム制」は、労働者自身が労働の開始時刻と終了時刻を決める制度です。

フレックスタイム制では、就業規則などで、「清算期間」と「総労働時間」が決まっています。

「清算期間」は労働時間を計算するための一区切りの期間です。例えば、1か月単位を清算期間として定めると、1か月ごとに労働時間が計算されます。「総労働時間」は、清算期間中に何時間働くかという労働時間数です。総労働時間には上限があり、「法定労働時間」を超えてはなりません。法定労働時間は、原則として40時間×清算期間の日数÷7で求められます。フレックスタイム制でも、「総労働時間の上限」を超えて働いた場合には、残業代が発生します。

 

清算期間 法定総労働時間の上限
31日 177.1時間
30日間 171.4時間
29日間 165.7時間
28日間 160時間

 

フレックスタイム制での残業代の計算方法

フレックスタイム制でも、
残業代=残業時間×1時間あたりの賃金×割増率
です。

残業時間

フレックスタイム制では、「総労働時間」を超えて働いた時間が、残業時間になります。
法定休日に働いた場合には、通常の総労働時間とは別枠で、働いた全ての時間が残業時間になります。

1時間あたりの賃金の計算

1時間あたりの賃金は、通常の勤務体系の場合と同様に計算します。

フレックスタイム制の残業代の割増率

表にしてみます。

割増率 深夜加算(午後10時から午前5時まで) 深夜業割増率(総計)
法定労働時間の総枠の範囲内の残業 25% 25%
法定労働時間の総枠を超える部分の残業 25% 25% 50%
大企業で、1か月あたりの法定労働時間を60時間以上超える部分の残業 50% 25% 75%
法定休日の残業 35% 25% 60%

 

 お問い合わせはこちら

あなたにお勧めの記事

働き方改革と社労士 1
働き方改革と社労士~その1~

働き方改革と中小企業 中小企業の経営者にとって働き方改革は、結構頭の痛い問題とな ...

 - 働き方改革, 賃金