労災保険

業務上ケガをした場合

療養(補償)給付とは

療養(補償)給付は、業務災害または通勤災害によりケガをしたり病気にかかった場合、病院等で治療が必要になったときの給付です。療養(補償)給付は「療養の給付」として、治療を自己負担なしに受けるのが原則です。労災病院や労災指定病院等に療養の給付請求書を提出すれば自己負担なしに治療が受けられます。あなたが治療を受けた労災指定病院等は都道府県労働局に対して診療費や薬剤費を請求します。

療養の給付の範囲

療養(補償)給付となる療養の範囲は次のようなものです。

  1. 診察
  2. 薬剤またはその治療材料費
  3. 処置、手術その他の治療
  4. 居宅における療養上の管理およびその療養に伴う管理・看護
  5. 病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護
  6. 移送

請求書の種類

業務中の災害の場合は「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式5)

通勤途中の災害の場合は「療養給付たる療養の給付請求書」(様式16の3)

用紙はお近くの労働基準監督署で分けてもらえますが、下記のリンク先からダウンロードでも入手できます。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/03.html

いろいろな様式がありますので、間違えないようにダウンロードしてください。

労災の請求書が無い場合は労災で治療を受けられないのか

緊急の場合など労災の請求書を持参できないのは良くあることです。その場合は口頭で「労災で治療を受けたい請求書は後日持ってきます。」と言うことを伝えてください。病院によって対応はまちまちですが、(一時的に立て替え払いをしなくてはならない等)後日請求書を持参すれば返金されます。会社の人に同行してもらうなどすればなおさら良いと思います。

労災指定病院以外の病院にかかった場合

出張先にケガをしたときに近くに労災指定病院が無かった場合など、労災指定病院に書かれないときがあります。この場合はいったん費用を負担した上で請求書の裏面を病院で記入してもらい、監督署に直接提出します。

会社近くの指定病院から自宅近くの病院へ転医する場合

会社内で負傷し当初会社の近くの病院にかかったが、当面休業することになり自宅近くの医院へ変わりたいときには「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届け」(様式6号)または「療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届け」(様式16号の4)を転院先の指定病院等へ提出します。

柔道整復師にかかった場合

柔道整復師には施術料金を直接労働基準監督署に対して請求する柔道整復師とそうで無い整復師があります。前者の場合は請求書は柔道整復師に後者の場合は労働者が直接監督署に請求書を提出します。

鍼・灸の施術を受けた場合

針灸の施術、マッサージについては医師が必要と認めた場合のみ支給対象となります。請求書に所定の診断書領収書などを添付して直接監督署に提出します。自分で勝手に施術を受けても労災保険は適用されません。

訪問看護事業者の利用

重度の脊髄・頸随損傷患者やじん肺患者等の病状が安定した状態にあり、かつ居宅にて保健師、看護師、准看護師理学療法士および作業療法士による療養上の世話および診療の補助が必要な労働者が支給対象となります。領収書を添付して監督署に提出します。

移送費・通院費

災害現場から病院等に行く場合自宅から通院する場合などでも移送費・通院費が支給される場合があります。支給要件は監督署にご確認ください。

 

社長およびその同居家族、役員と労災保険

労災保険は労働者に対して補償をします

労災保険による補償を受けられる人(労働者)は労働基準法で規定されている労働者で、「職業の種類をとはず事業に使用される者で、賃金を支払われる者」です。ここで、「使用される者」とは他人の指揮命令の下で労働する者です。「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称に関係なく労働の対象として使用者が支払うものすべてを言います。

従って、正規労働者だけで無くアルバイト、パート、日雇い労働者、季節労働者などで有ってもすべて、労働者と見なされます。

それでは、よく問題となる次の方々は労働者となるかどうかについて考えていきましょう。

会社役員

営業部長、総務部、経理部長などは取締役を兼ねている場合が多くありますが、これらの方々は労災事故が発生した場合保護の対象になるでしょうか?

株式会社の取締役であっても、定款等の規定による業務執行権を有する者以外の者で事実上の業務執行兼を有する他の取締役の指揮、監督を受けて労働に従事して、その対象として賃金を受けている者は、原則として労働者として取り扱われます。しかし、法人の機関構成員としての業務に従事している間に生じた災害については労災保険の給付対象とはなりません。

監査役や理事についても事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は労働者として取り扱われます。

結果として、労働の実態(労働者としての身分を有して労働者としての仕事をしている)および報酬の性質により判断されることとなります。

昭和23年3月17日基発第461号、昭和34年1月26日基発第48号

同居の親族

店主(つまり代表取締役)とその奥さんだけで営業している商店で奥さんが仕事時間中にケガをした場合労災保険は適用されるのでしょうか?労災保険はアルバイトでもパートでも事業主との間に労働関係が認められる限り労働者となりますが、労働基準法が同居の親族のみを使用する事業場、および家事使用人には適用されないことになっているため、労災保険法も適用されません。

同居の親族がその事業場で労働者として働いていたとしても事業主と利益を一にしており、事業主と同一の地位にあると考えられているためです。

しかし、同居に親族であっても常時同居の親族以外の労働者を使用する場合において、労働に従事し事業主の指揮命令に従って労働していることが明確で、労働時間の管理、賃金の決定・支払いから見て、他の労働者と同様の就労実態であると言うことであれば労働者となります。

在宅勤務者

最近増えているのが在宅勤務をする方です。多様な働き方の推進と相まって今後も増えてくるものと予想されています。在宅勤務の場合はどこまでが労働でどこからが労働で無いのかはっきり区別をつけることは難しいところが有りますが、昭和60年に労働基準法研究会報告「労働基準法の労働者の判断基準について」が示されています。扱いが労働者と比較してどうか。というところが問題になるようです。労働者に当たるかどうかの具体的判断は

使用従属性が有るかどうか。

使用者の具体的な仕事の依頼、業務従事の指示に対して拒否することを認められていれば指揮監督関係を否定する要素となる。(労働者では無い)。拒否する事由を有しない場合は指揮監督命令の下に従事していると考えられる。その場合には事実関係だけでは無く契約関係も勘案して決定する。業務の内容および遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けていることは指揮命令下にあることを示す重要な要素ではある。しかし、通常発注者がが行う程度の指示ではそうとはいえない。

勤務する場所や勤務時間が指定されている場合には指揮命令下にあることを認めうる重要な要素ではある。しかし、業務の性質、安全性の確保の点から指定されている場合には必ずしもそうとはいえない。

本人に変わって他の労働者が労務を提供することが認められている場合、もしくは本人の判断により補助者を使うことが認められている場合は指揮命令下にあるとはいえない。

報酬が時間給で計算されるなど労働の結果による格差が少ない、欠勤した場合は応分の控除がある。残業手当等が支給される等々報酬の性格が使用者の元で一定時間労務を提供していることの対価と判断される場合は使用従属関係が認められる。

労働者性があるかどうか

本人が所有する機械器具が著しく高価な場合は自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者と認められる。

報酬の額が当該事業に従事している正規の従業員と比較して著しく高額である場合は、当該報酬は事業者に対する代金の支払いと認められ労働者性は否定される。

他社の業務に従事することが制度上制約され、また、時間的余裕も無く、事実上困難である場合は専属性の程度が高く労働者性を認められる。

報酬に固定給部分がある、事実上固定給となっている。その額も生計を維持しうる程度の者である場合は労働者性を認めうる。
司法の判断では

  1. 採用、委託との選考過程が正規従業員とほとんど同じである。
  2. 報酬について給与所得として源泉徴収を行っている。
  3. 服務規定を適用している。
  4. 労働保険の適用対象としている

など使用者が労働者であると認識していると推定される場合労働者性があるとしている。
在宅勤務者が労働者であるかどうかは労務の提供の形態、報酬の労働との対償性などで総合的に判断されます。

そして、在宅勤務者が労働者であると認められた場合でも、自宅内で(作業場所内)でのケガが労災に当たるかどうかは「業務遂行性」と「業務起因性」により判断されます。

労働保険事務組合の種類

実は労働保険事務組合には種類がある

労働保険事務組合とは「事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体です。」というと、労働保険事務組合はみんな同じように聞こえますが、実は運営母体により様々な違いがあります。たとえば「委託 事務組合」というキーワードで検索してみると「事務組合」がたくさん出てきます。「○○SR経営労務センター」、「××町商工会」、「○×協同組合」など様々なものが出てきます。それぞれの組合の加入条件に合致していればあなたはどの組合にでも加入することができます。逆に言えば、あなたがどんなに加入したくても加入条件を満たさなければその事務組合に加入することはできません。

事務組合の種類

事務組合はその成り立ちにより

  • ゼネコン協力会系
  • 国保組合系
  • 商工会系
  • 所属団体系
  • 社労士(個人)系
  • 社労士団体系(SR事務組合)

に分かれます。大まかな特徴を表にまとめました。

事務組合特徴の比較表

 

母体 ゼネコンの 下請会系 国保組合系 商工会系 所属団体系 社労士系

(社労士個人が事務組合を運営)

Sr事務組合

(当事務所が加盟)

会費 安い ※ 会費以外に事務手続費用を徴収する場合が多い 会費が不明 確な団体も? 安い(社労士顧問料は別途)
労災事故 社労士がいなければ手続できない できる できる
社会保険 社労士に委託が必要なため、 別途費用がかかる 可能 できる
一人親方 労災 団体を持っている場合もある できる

※ただし、加入しているゼネコン等以外の現場での労災事故報告はしづらい。

母体がゼネコン、元請会社の下請会の労働保険事務組合に加入するメリット・デメリット

メリットとしては、仕事が回ってくる?かもしれない。という期待感でしょうか。実際に回ってくるかはわかりませんが、

デメリットとしては、①そのゼネコンの仕事でケガをした時でも、安全協力会のときみんなの前で事故の概要を報告される(恥ずかしい)、②事故を起こしたことが分かってしまうので、次から仕事をもらえないことがある(生活に困る)、③ほかのゼネコンの現場でケガをしたことを報告しにくい(労災保険が使えない)、などがあります。

母体が国保組合の労働保険事務組合に加入するメリット・デメリット

メリットは、同時に国保組合に加入することもできることでしょう。

デメリットとしては、細々とした活動にかり出されること。労災事故のプロではない職員が労災の手続をしている(労災手続に手間がかかる)。 また、国保組合の加入者が個人から法人に法人成りし、そのまま国保組合に加入し続けること自体が困難になっていますので、このようなときは労働保険事務組合のみの団体に移行する例が増えています。

母体が商工会議所の労働保険事務組合に加入するメリット・デメリット

メリットは、すでに商工会議所に加入している場合は、会費が不要(しかし、事務手続料という名目で別途会費が取られる)という点があります。

デメリットとしては、①会費以外に事務手続料を徴収される、②労災事故のプロではない職員が労災の手続をしている(労災手続に手間がかかる)、などがあります。

母体が社労士系の労働保険事務組合に加入するメリット・デメリット

社労士系の事務組合のメリットとしては、労災保険の専門家である社労士が手続きを行う事があげられます。社会保険についても同じ事務所で委託を受けることが可能です。

デメリットとしては、顧問契約が必要で事務所により金額が異なる。顧問契約の内容も異なるといったことがあげられます。

SR系の労働保険事務組合に加入するメリット・デメリット

SR経営労務センターというのは社労士の集まりで構成している労働保険事務組合です。昔は、社労士個人で労働保険事務組合を持つことができましたが、現在では社労士個人で事務組合を持つ事はほとんど不可能です。その代わりに、各都道府県に一つ「各県の社労士が集まって労働保険事務組合を作る」事が認められています。これを○○SR経営労務センターといい、○○の部分には都道府県名が入ります。参画している社労士と「顧問契約」を結び労働保険事務を委託することができます。事務組合とのやりとりはすべて、社労士が仲立ちしますので顧問契約をする社労士との相性が大事になると思います。

加入する際の判断基準

私の考えでは(事務組合のメリット3にも書きましたが)ズバリ、特別加入です。極論すれば特別加入しないのならば事務組合に加入するメリットはほとんどありません。労働保険料が分割で払えるのもありますが、そのためにいくらかの年会費を支払うのですから、この低金利時代にメリットといえるかどうか疑問です。そもそも保険料が高額であれば事務組合に加入して無くても分割払いを選択できます。

どの事務組合がいいか

建設業で、仕事をもらうためと割り切れば「元請け、ゼネコン系」は一つの選択肢になるでしょう。しかし、事実「他の現場での労災事故の申請ができない」との理由で私のところにいらっしゃる方も少なからずいることも事実です。また、元請けへの気遣いから労災隠しへ発展してしまうこともあるようです。

国保組合・商工会系は、すでに国保や商工会に加入している場合、あらかじめ結びつきがあるので加入しやすいのでは無いかと思います。社会保険の手続きや労災事故の手続きができないことに注意する必要があります。そういう点では中途半端な感じがします。

社労士系SR系はそのような心配は無く、社会保険の手続きも労災事故の手続きも社労士が行うことができます。ただ、社労士個人の信頼性の見極めが重要。なのかなと私は思います。くれぐれもこんなはずじゃあ無かった。などと言うことが無いように。

労災特別加入

労災保険特別加入制度とは

労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、障害または死亡に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外の方のうち、その業務の実状、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方に対して特別に任意加入を認めているのが、特別加入制度です。
特別加入には、次の4種類があり、それぞれその加入者の範囲、加入要件、加入手続き、加入時健康診断、業務上外の認定基準(保険給付の対象となる災害の範囲)などが異なっています.

船舶所有者の方の特別加入(平成22年1月~)

平成22年(2010年)1月1日から船員保険の職務上疾病および年金部門が労災保険に統合されました。船舶所有者の方に使用されている労働者たる船員の方は引き続き補償されますが、船舶所有者の方(中小事業主または労働者を雇用していない方)は今まで受けていた業務上の事由または通勤によるけがや病気に関する補償を受けるには労災保険に特別加入する必要がありますのでご注意ください。
なお、船員保険の上乗せ給付は労災保険が支給されていることが要件になります。

特別加入者の種類

  • 中小事業主(第1種特別加入者)
  • ひとり親方その他の自営業者(第2種特別加入者)
  • 海外派遣者(第3種特別加入者)
  • 特定作業従事者(第2種特別加入者)

第1種特別加入者とは

第1種特別加入者とは中小事業主及びその事業に従事する者をいいます。
特別加入することができる中小事業主は次の規模で、労働保険事務組合に労働保険事務処理を委託する者に限られます。

特別加入できるもの

  1. 下記の特定事業の中小事業主
  2. 下記の特定事業に従事する者
    家族労働者や法人企業の代表権をもたない役員など
    ただし、その実態が労働者と同様である者は労働者として通常の労災保険に加入し、特別加入はしない。

特定事業(特別加入できる事業主の範囲)

•金融業、保険業、不動産業、小売業    常時50人以下の労働者を使用する事業主
•卸売業、サービス業          常時100人以下の労働者を使用する事業主
•その他の事業             常時300人以下の労働者を使用する事業主

特別加入の要件

  1. その事業について、労災保険に係る保険関係が成立していること。
  2. 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。
  3. 中小事業主及びその事業の従事者を包括して特別加入すること。

解説:従業員のいない企業の中小事業主は特別加入できない(事業主単独では加入できない)ということです。

第2種特別加入者とは

第二種特別加入者(一人親方等)
①一人親方その他の自営業者及びその者が行う事業に従事する者
②特定作業従事者

特別加入するには
①一人親方等及び特定作業従事者が構成員となる団体を通じて特別加入すること。
(当事務所は神奈川SR経営労務センター労働保険事務組合に加入しています)
②一人親方等及び特定作業従事者を包括して加入すること。

一人親方とその他自営業者とは

次の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者をいう。

  • 旅客又は貨物の運送の事業
  • 建設の事業
    (破壊、解体又はその準備の事業を含む)
  • 漁船による水産動植物の採捕の事業・林業の事業・医薬品の配置販売の事業・再生利用目的の廃棄物等の収集、運搬、選別、解体の事業 

特定作業従事者

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 職場適応訓練従事者
  • 事業主団体等委託訓練従事者
  • 危険有害作業の家内労働者等
  • 労働組合等常勤役員
  • 介護作業従事者

第2種特別加入の要件(第2種特別加入者)

  • 一人親方等及び特定作業従事者が構成員となる団体を通じて特別加入すること。
  • 一人親方等及び特定作業従事者を包括して加入すること。

第3種特別加入とは(第3種特別加入者)

第三種特別加入者とは海外派遣者で労災保険に特別加入するもののことを言う

①独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人

②日本国内で事業(有期事業を除く)を行う事業主から派遣されて、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる事業に従事する労働者

③日本国内で事業(有期事業を除く)を行う事業主から派遣されて、海外にある中小規模の事業(表1参照)に従事する事業主およびその他労働者以外の人。

派遣される事業の規模の判断については、国ごとに、企業を単位として判断します。例えば、日本に本社があって海外に事業場をもつ企業の場合には、日本国内の労働者も含めると総数では表1の規模を超える場合であっても、派遣先のそれぞれの国の事業場において表1の規模以内であれば特別加入することができます。

表1 中小企業の範囲

  • 金融・保険・不動産・小売業・・・・・・・・・・・・・50人以下
  • 卸売り・サービス業・・・・・・・・・・・・・・・・100人以下
  • それ以外の業種・・・・・・・・・・・・・・・・・・300人以下

第3種特別加入の要件

  • 国内の派遣元の団体又は事業主の事業について、労災保険に係る保険関係が成立していること。
  • 国内の派遣元の団体又は事業主の事業が継続事業であること。この場合は、包括加入の必要はない。

第3種特別加入者の給付基礎日額と保険料

  •  給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるもので、25000円から3500円までのうち申請に基づいて労働局長が決定します。
  • 年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に保険料率(3/1000)を乗じたものとなります。(平成27年改訂)

第3種特別加入者の保険給付・地位の消滅

  •  海外出張の場合特別加入なしに労災保険の対象になりますが、海外派遣の場合は特別加入しなければ労災保険の対象にはなりません。
  • 中小企業の代表者として派遣される場合は、おおむね国内における第1種特別加入者と同様の補償になります。
  • 海外勤務特有の条件があります。詳細はお問い合わせください。

労災保険料とメリット制

労災保険のメリット制

労災保険を使うと必ず保険料が上がると思っていませんか?

労災保険率は事業の種類ごとに定められており、業務災害の発生防止努力を促す意味を含めて事業所ごとに保険料を上下させています。これをメリット制と言います。労災を1件でも発生させてしまうと直ちに労災保険料が上がってしまうと勘違いしている方も多いのですが、メリット制の適用には会社の規模と事業の継続性等の要件があり、すべての事業所で適用されるわけではありません。なお、メリット制が適用される場合は、年度更新時に労働保険料申告書といっしょに「労災保険率決定通知書」が送付されることになっています。

労災保険料

労災保険の保険料は事業の支払う賃金総額に労災保険料率を乗じて計算します。が請負による建設の事業や立木の伐採などの特殊な事業は請負金額の労務費率をかけたものに労災保険料率を乗じて計算します。

労災保険料の計算

メリット制

メリット制とは要件を満たす個々の事業について、その事業の労働災害の多寡によって一定範囲内で労災保険料率または労災保険料を増減させる制度のことです。つまり、労働災害の少ない事業主には労災保険料の減額を行い、逆に労働災害が多い場合は労災保険料の増額を行うという制度です。メリット制は「労働災害の発生頻度に基づく労災保険料の増減」することによって事業主の労働災害防止努力を喚起し、労働災害を減少させることを目的としています。また労災保険料率は「事業の種類」ごとに定められていますが、同じ事業の種類に属していても作業工程、使用する機械工具などの事業主の災害防止努力によって、労災発生率は大きく異なるため、メリット制により同一業種の事業主間での負担の公平をはかるという機能を持っています。

メリット制の適用(どうして、すべての事業が対象にならないのか)

メリット制は事業主の労働災害防止努力を保険料に繁栄させていく事を目標としています。ここで、1%の労災発生率であると仮定してみると従業員数1000人の企業では1年間に10人の方が労働災害に遭遇することになります。従って、労災に遭遇する人の数が10人より多いか少ないかで事業主の労災防止努力を計る事ができますが、従業員10人の企業では10年に一人しか労働災害に遭いません。この場合、労災発生が0でも事業主が労働災害防止努力をしているかどうか判断できません。従って、メリット制を適用するためにはある程度の従業員数が必要になります。

継続事業のメリット制の適用

継続事業では個々の事業について事業の種類ごとに定められた労災保険料率から通勤災害などの非業務災害率(全業種一率に0.6/1000)を減じた額をメリット収支率に応じて定められている増減率(最大±40%、有期事業の一括の場合は±35%、有期事業で規模が小さいものについては±30%)で増減させ、その増減された率に非業務災害率0.6/1000を加えて率をその事業の労災保険率します。
つまり、継続事業については労災保険料率を上げ下げすることによって保険料の上げ下げをしています
継続事業のメリット制の適用を受けるには次に掲げる「事業の継続性」と「事業の規模」の2つを同時に満たすことが必要です。なお、有期事業の一括がなされている事業についてもこの「継続事業のメリット制」が適用になります。

「事業の継続性」

メリット制が適用される保険年度の前々年度に属する3月31日(以下基準となる3月31日とする)現在において、保険関係成立後3年以上経過していること

「事業の規模」

基準となる3月31日の属する保険年度から過去にさかのぼって連続する3保険年度中の各保険年度において次の要件のいずれかを満たしていること

  • 100人以上の労働者を使用していること
  • 20人以上100人未満の労働者を使用する事業では、その使用する労働者数にその事業が該当する事業の種類の労災保険料率から非業務災害率を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの。すなわち

労働者数×(労災保険率-非業務災害率)≧0.4
ここで非業務災害率は徴収法により0.6/1000と規定されています。

一括有期事業のメリット制の適用条件

有期事業の一括が適用されている建設および立木の伐採事業については確定保険料の額が40万円以上である事業にはメリット制が適用されます。

従って、3保険年度のうち1保険年度でもこの事業の規模の要件(確定保険料額が40万円以上)を満たさない場合はメリット制は適用されません。

継続事業のメリット制における労働者数の考え方

継続事業のメリット制が適用されるには一定以上の労働者数を有していることが必要ですが、この労働者数には、日雇い労働者やパート労働者なども含むため常に一定とは限りません。労働者数の数え方は次の決まりによります。

  1. 船きよ、船舶、岸壁、波止場、停車場または倉庫における貨物の取り扱いの事業においては、当該保険年度中に使用したのべ労働者数を所定労働日数で除して得た数
  2. それ以外の事業にあっては、当該保険年度中の各月の末日(賃金の締め日がある場合にあっては各月末日の直前の賃金締め日)において使用した労働者数の合計を12で除して得た数

委託している事務組合を替えたい

社会保険労務士

事務組合ヘの委託をやめる

事務組合から委託替え(委託解除)をする理由

「必要性を感じなくなった。」というのが最大の理由でしょう。さらに深掘りしていけば「特別加入の必要がなくなった」、「労働保険料の分割しなくてもいい」あたりが、これに当たります。

「担当者への不信感」が次に挙げられます。ミスが多いとか手続きしなければいけないのを忘れていた。などがこれに当たります。理由の90%はこの2つでしめられると考えられますが、特別加入だけ脱退したが、事務組合は続けた例もあります。続けた理由は労働保険の手続きが再度必要になるためです。が、私との信頼関係も有ったのでは無いかと思っています。(当然すべてをお話しし,委託解除するかどうかを判断していただきました。)

最後に、やむを得ない理由として、「事業の終了」が有ります。

ケース1.大手社労士事務所が事務組合を併設していた場合。

従業員を何人も雇用している社労士法人が運営している事務組合での実例。大手の事務所なので代表社労士が直接担当していたのではなく職員が担当でしたが、依頼した手続きを放置して何の連絡も無く半年が経過していました。直接の理由は事業所を移転して神奈川に変更したのでこちらで探していたとのことでしたが、そのまま、東京の事務組合でも何の支障も無いはずなので、やはり職員の怠慢が要因になっていると思います。大きな事務所(事務組合)、立派なビルに入居している事務所(事務組合)だからといってきちんと仕事をやってくれるとは限らない。という典型的な例です。最後には放置していた手続きを「新しい先生にやってもらってください」と丸投げする始末。

ケース2.個人社労士事務所がSR事務組合に加入していた場合

この場合では、新規に契約していただいたときに、(おそらく開業当初だったためか)「べらぼうに安い金額で契約」していました。はっきり言って私ではとてもあの金額でやる気にはなりません。このような金額で契約した場合、最初は仕方なくやるかもしれませんが、だんだんと事務所の方が軌道に乗ってくれば「あのお客様は金額が安いのでできればやりたくない」と思うのはあり得ると思います。(さらにこちらの先生の場合は、埼玉の方が神奈川の事業所を顧問として持ておられました。よく、契約したものだと感心してしまいます。あまり遠いのも問題では無いかと思います。2021年追記:今では電子申請やクラウドチャットなどの進化により問題なく仕事を進められると思います)そこで契約内容の見直し交渉を行えればいいのですが、何となく言い出しにくかったり、お客様の方で拒絶したりすれば放置状態になってしまうこともあり得ると思います。SR事務組合のケースでは、個々のお客様との関係はすべて担当社労士に一任されており、事務組合に連絡しても担当社労士に連絡するだけで何もしてはくれません。代わりの人を担当にしてくれることもありません。こうなってしまったら、社労士との契約を切って新たに労災加入手続きをやり直すしか有りません。

さて、どうも信頼に問題があるケースばかりご紹介してしまいました。もちろんこんな事務所ばかりではありませんので安心してください。最後に、特別加入が不必要だと判断したケースです。

ケース3.特別加入が不要と判断した場合

さて、これは私のケースです。労災加入の手続きの依頼と労務顧問としての関与の依頼を受けまして、よくお話を聞いていると現場で労働者の先頭に立って働いているとのことだったので労災保険料率の最も低い業種だったため「大して負担にならずに最低限の安心を得られる」としてご案内しましたが、数年経過後、特別加入は不要との判断にいたり、それでは「事務組合も脱退しても大して支障は無い」とご案内し脱退となりました。結果として、まあ、最初からいらなかったかな?とも思います。民間の保険よりはズーと有利だと思うのですが、だいたいの方は民間の医療保険にも入っていますからね。そちらでカバーできれば重複補償は不要だと思います。

 

事務組合の委託をやめた後の事務処理

  1. 自社で労働保険事務を行う
  2. 社労士に委託する(事務組合には入らない)
  3. 他の事務組合に委託し直す

の3つが考えられます。
これらの場合について事務組合をやめた場合の手続きについて考えてみたいと思います。

委託終了するときに「労働保険委託解除届け」というものを提出します。処理が終了した後に事業主控えが渡されます。

  1. の場合それを持って所轄監督署に行き、労働保険の新規手続きをしてください。その後ハローワークで事業主各種変更届(労働番号変更)の手続きをしてください。必要書類等の詳細は各窓口の指示に従ってください。
  2. の場合それを社労士に提出して労働保険の手続きを依頼してください。
  3. の場合それを事務組合に提出して労働保険の手続きを依頼してください。

いずれの場合も新しい労働保険の保険関係成立届けに提出期限が有りますから間に合わない場合は古い労働保険成立届けの事業主控えを持ってそれぞれの窓口に行って指示に従ってください。この届けが済まないうちに労災事故が起きますと「未加入の扱い」になってしまいます。十分注意してください。

労働保険事務組合に労働保険事務を委託をする時

社会保険労務士

労働保険事務組合とは

事業所には事業を行う上でで、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入することが義務づけられています。労働保険事務組合は厚生労働省の認可を受けて労働保険に関する事務を事業主に代わって行います。具体的には,労働保険の加入手続き年度更新時の概算保険料の算出や労働局への申告特別加入申請(事業主や役員の労災保険の特別加入申請)を行います。

労働保険事務組合に委託出来る事業主

労働保険事務組合は中小企業の事業主に代わって労働保険事務を行うことは今述べましたが、業種により委託出来る事業主の規模が異なっています。

  1. 金融・保険・不動産・小売り・・・・・・・50人以下の従業員を使用する事業主
  2. 卸売り・サービス業・・・・・・・・・・・100人以下
  3. その他の事業・・・・・・・・・・・・・・300人以下

労働保険事務組合に委託出来る一人親方

一人親方とは主に建設業で従業員を雇用せずに文字通り一人で業務を行っている大工さん左官屋さんなどのことです。これらの方々も労働保険事務組合に事務委託出来ます。労働保険は事業主一人では加入出来ませんが、これらの方々は事業主のために作られた「特別加入」という制度を使って、労災保険に加入することができます。この特別加入制度を使うことによって、労働者とほぼ同じ補償が受けられるようになりますし、建設現場ではこの制度に加入することを就労の条件とするところもどんどん増えています。

労働保険事務組合に委託するとき

労働保険事務組合に委託をする最大の理由は「特別加入」だと思います。特別加入をするわけは特別加入することにより事業主でも労災保険に加入したのと同じ補償が受けられるからです。民間の保険で同じ補償を受けるだけの保険に加入したら、すごい金額の保険料を支払わなければならないでしょう。(現実には同じだけの補償をしてくれる保険は無いと思います)また、建設現場では、労災に加入していない人はたとえ事業主でも現場に立ち入れなくなっています。そんな理由から特別加入をするために事務組合に委託する事業主が大勢います。

次に単純に、労働保険事務を任せていた事務員さんがやめてしまったために、各種届け出でができなくなって困っている事業主さんがあげられます。ただ、この場合は社労士さんに頼めば、給与計算から各種届け出でまでこなしてくれるので、積極的に事務組合に頼む理由はありません。事務組合は労務トラブルとかの対応はしてくれません(法律的にできない)が、社労士さんなら多少のことは面倒見てくれます。

労働保険料が少額でも年3回の分割納入が可能ですが、年会費がかかることもありますし、これを理由に加入する方はまずいないと思います。

いろいろある事務組合でどれがお勧め

おすすめの事務組合はどれか?「事務組合の種類」というページでいろいろな事務組合の特徴を述べていますからそちらを参考にしてみてください。万が一、労災事故が起こってしまったときは社労士で無いと給付事務ができないので社労士がやっている事務組合がおすすめです。まあ、事故は起こらないに越したことはありませんが。私が加入しているのは「神奈川SR経営労務センター」という社労士の団体が運営している事務組合です。年会費も16800円と安いのでおすすめだと思います。残念ながら、事務組合には地域制限があり神奈川県と東京都、静岡県以外の事業所はお取り扱い出来ません。あしからず。

 

2017.0608 sharou4.comにて公開

労災保険と災害補償

労災保険とは

労災保険は労働者が働く上での最低限の基準を定めた労働基準法にある「災害補償」という規定を実現するためにもうけられています。

災害補償とは(労働基準法)

使用者が労働者を雇用し自らの指揮命令下に置いて労働をさせるにおいて労働者が負傷し、疾病にかかったならば自らの費用で必要な保障を行わなければならない。と労働基準法には定められています。これは、使用者側に過失が有ったか無かったかにかかわらず無過失賠償責任を行わなければならない。とするものです。

労働基準法の災害補償規定

75条(療養補償)

労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合においては、使用者はその費用で必要な療養を行い、または必要な療養の費用を負担しなければならない。

76条(休業補償)

労働者が前項の規定による療養のため、労働することができないため賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償をお粉分ければならない。

77条(障害補償)

労働者が業務上負傷し、または、疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存ずるときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第2に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。

78条(休業補償及び障害補償の例外)

労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。

79条(遺族補償)

労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の1,000日分の遺族補償を行わなければならない。

80条(葬祭料)

労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行うものに対して、平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない。

84条(他の法律との関係)この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法または厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行われるべきもので有る場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価格の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

労災保険の意味

使用者によっては、必要な災害補償を行うことが資金的に困難な場合も有ります。このような場合にも被災労働者に対する災害補償を確実に行うために労災保険制度が作られました。そして、使用者が行うべき災害補償について労災保険法による給付が行われる場合はその責任を免れるということになっています。

労災保険の被保険者と保険料

労災保険の被保険者は労働者ですが、保険料は全額事業主負担となっているのはこのように労災保険法が事業主の災害保証責任を肩代わりするものになっているためです。そして、労災保険は農林水産業などの一部暫定任意適用事業を除いて労働者を一人でも使用する事業場は加入しなければならないことになっています。

労災保険の給付

労災保険はその事業場に使用されている労働者で有れば、労災が発生したときには保険給付が受けられます。健康保険や雇用保険と違って労働時間数や正社員・アルバイト・パートなどの身分の違いで差別されることは有りません。

労災保険の給付と健康保険の給付

労災保険と健康保険には同じような給付が多々有ります。両者の違いと言えば、労災保険は仕事上または通勤によるケガ、仕事が原因となる病気に対して給付が行われるのに対し,健康保険では、業務外のケガまたは病気に対して保険給付が行われると言うことです。

さて、ここで問題になるのが労災隠し(悪意では無い場合)です。悪意による会社ぐるみの労災隠しは論外ですが、次のような場合は結構有るのでは無いでしょうか?

会社にの階段で足をひねったが、その日はたいしたことは無いと思い、普通に勤務して帰宅した。翌日になって腫れてきたので会社を休んで医者にかかった。このような場合本来なら、労災なので、労災保険の給付を受けることになるのですが、医者の方でも突っ込んだ質問をせず。社員の方でもただ、「階段で足をひねった」としか言わなかった場合。健康保険で受診してしまうことは十分考えられます。

この場合労災保険で有れば療養費はかかりませんが、健康保険では3割を自己負担しています。もしこれが、滑って転んで、骨折したとか言う場合には休業補償では健康保険は報酬の2/3ですが、労災保険では80%が支給されるなど、一般的に言って労災保険の方が給付が厚いので労災隠しは労働者にとって損になります。

健康保険の給付範囲の改正(平成25年)

まだ記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、シルバー人材センターから派遣されていてケガをした方が健康保険からも労災保険からも給付を受けられずに高額の自己負担を強いられた。というケースが問題となりました。このような場合を解消するために、「健康保険の被保険者および被扶養者の労災保険の業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産に対して保険給付を行う」事になりました。難しい言い回しになりましたが、簡単に言うと労災保険が使えない場合は健康保険から給付が受けられると言うことです。

労災保険に関するよくある誤解5つ

事業主の方々や従業員の皆さんと話をしていると労災保険についてよく誤解されていることがあります。それは、

1.労災保険を使うと監督署が調査に来る。

労災保険を使ったからといって、すべての場合に調査が来るわけではありません。通常起こるような、ねんざ、打撲程度では監督署は来ません。数日にわたり休むようなケガの場合は一応「来るかもしれない」と思っておいた方がいいでしょう。

2.労災保険を使うと保険料が上がる。

労災保険には確かに、労災事故の多い少ないにより保険料を上げ下げする制度があります。この制度をメリット制といい、事業主の労災防止努力により保険料が増減するものです。しかし、すべての事業所がその対象になるわけではありません。

一般の会社のメリット制適用条件

次のA,Bのいずれかを満たしていること。

A:100人以上の労働者を使用した事業であること。
B:20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が0.4以上であること。

災害度係数は、以下の計算式で算定します。
災害度係数=労働者数×(業種ごとの労災保険率−非業務災害率) ≧ 0.4

有期事業のメリット制適用条件

連続する3保険年度中の各保険年度において、確定保険料の額が40万円以上であること。(平成24年度以降)それ以前は100万円

単独有期事業の場合(建設業など)

次のA、Bのいずれかを満たす事業について適用されます。
A 確定保険料の額が40万円以上であること。
B 建設の事業は請負金額が1億2千万円以上、立木の伐採の事業は素材の生産量が1,000㎥以上であること。
なお、?の要件が適用されるのは平成24年度以降に労災保険の保険関係が成立した事業であり、平成23年度以前に成立した事業については、「確定保険料の額が100万円以上」となります。

等の条件を満たさない場合は保険料は上がりません。従って、一般の会社で従業員数が20人以下の場合は労災を使っても保険料は上がりません。

3.通勤時間は労災保険が使えない。または、すべて使える。

通勤に関しては、通常の径路上であれば労災になります。が、途中で買い物をしたり飲食をした場合はその後は労災になりません。例外として、その買い物が、日常生活上必要な最低限度のものである場合はその買い物中を除いて対象になります。

判断は微妙なので役所や専門家にお尋ねください。

4.健康保険で治した方がめんどくさくない。

保険証を持って行けば保険が使えるので安易にそうしてしまうことがありますが、「労災隠し」と判断され立派な違法行為です。労災保険は健康保険に優先して適用されます。労災なら治療費は無料です。

5.パートなので労災保険は使えない。

パートやアルバイトであっても労災は労災保険で治療します。

 

労災保険の適用除外・任意適用

労災保険適用事業とは

①個人事業所及び法人事業所が、
従業員を一人でも雇用する場合は、
③適用除外又は暫定任意適用事業に該当しない限り、
④強制適用事業となり保険関係が成立します。

適用労働者の雇用形態(パート、アルバイトなど)や年齢は問われません。

労災保険の適用除外

  • 国の直営事業(国有林野など)
  • 特定独立行政法人(印刷、造幣など)
  • 非現業の官公署の事業〜事務部門の役所

船員保険の被保険者については平成22年1月より適用事業になりました。

労災保険の暫定任意適用事業

  • 農  業  常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業。但し、一定の危険又は有害な作業 を主として行う事業及事業主が特別加入している 事業は、強制適用事業になります
  • 林  業  常時労働者を使用せず、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の事業
  • 水産業 常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業で、総トン数5トン未満の漁船によるもの又は災害発生のおそれが少ない河川・湖沼・特定水面において主として操業するもの

労災保険の暫定任意適用事業の任意加入

事業主は労働者の過半数が希望すれば、任意加入の申請をし、厚生労働大臣(都道府県労働局長に委任)の認可を受けることにより、加入しなければならない。 また、事業主は労働者が希望しなくても認可を受けて加入することができます。

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労務費率(労務比率ではありません)

労務費率とは

「ろうむひりつ」と検索ボックスに入力すると「労務比率」の方が先に出てくるのでどうしてもそれで検索する方が多いようです。が、正しくは「労務費率」です。こうするとどんな数字なのかがわかってきますね。(これ社労士試験の穴埋めに出したら正答率50%以下だったら笑えないなあ。)

実際に労務費率はどう使う

労働保険料の計算において、労災保険料は、賃金総額に労災保険率を乗じて計算します。
賃金総額 × 労災保険率 = 労災保険料
賃金総額は、原則として、事業主が雇用するすべての労働者に支払う賃金の総額です。労災保険は、パートであろうとアルバイトであろうと適用になりますから、保険料も納めなくてはいけません。

この、労災保険料の計算において「賃金総額」を正確に算定することが困難であろうと思われる事業については「賃金総額」の計算に特殊な方法が用いられるときがあります。その中の一つが「請負による建設業における労務費率」です。

「請負による建設の事業」の賃金総額算定の特例

表題の通り、請負による建設の事業は、数次の請負によって行われるのが普通です。
この場合、元請負人がその下請負人に雇用されるすべての労働者についての賃金総額を算定し、労災保険料を計算して納付することになります。
しかし、元請負人がその事業全体の賃金総額を正確に把握することが困難な場合があるため、請負金額に、労務費率を乗じて得た額を賃金総額とすることが認められています。

わかりにくいので、具体的例としてあなたが注文建築で家を建てるとします。あなたは、「ハウスメーカーA社」に建築を依頼します。このときあなたとA社の間には建築請負契約が締結されます。しかし、A社がすべての作業をするわけではなくそれぞれ下請けの「大工さん」が柱を立て、「左官屋さん」が壁を塗り、「電気屋さん」が電気工事を行うといった具合になります。場合によっては大工さんのところが一括して「一次下請け」として仕事を受け、それぞれの業者さんに「二次下請け」として、仕事を依頼することもあります。これが、建設業における「数次の請負」構造です。この場合、ハウスメーカーが労災保険をかけなければなりませんが、いちいち電気屋さんや左官屋さんの賃金を聞くわけにもいきません。聞いても教えてくれないでしょう。よって、国で定めた労務費率を請負金額に乗じて得た額を賃金総額として、労災保険料の算出に用いる特例が認められているわけです。

労務費率表(ダウンロードはこちらから)

平成27年↑
平成30年↑

 

 

 

参考図書

労働保険事務組合のメリット3つ

労働保険事務組合加入メリット

労働保険事務組合とは

労働保険事務組合とは事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務処理をすることについて厚生労働大臣の許可を受けた中小事業主の団体です。

当事務所では「神奈川SR経営労務センター」に加入し、中小事業主および一人親方(建設業・個人貨物配送業にかぎる)の特別加入など皆様の労働保険事務をサポートしています。

加入できる事業主様には各種の制限がありますので、お気軽にお問い合わせください。

特別加入できる事業主の範囲

金融・保険・不動産・小売り・・・  常時使用する労働者数が50人以下
卸売り・サービス・・・・・・・・  常時使用する労働者数が100人以下
その他の業種・・・・・・・・・・  常時使用する労働者数が300人以下

労働保険事務組合に委託できる事務の範囲

概算保険料・確定保険料などの申告納付に関する事務
保険関係成立届け、任意加入の申請、雇用保険事業所設置届けの提出等に関する事務
労災保険特別加入の申請に関する事務
雇用保険の被保険者に関する届け出で等の事務
その他労働保険についての申請、届け出で、報告に関する事務

労働保険事務組合に加入するメリット3つ

労災保険に加入できない事業主も特別に加入することができるようになる。

労働保険事務組合には様々な特典がありますが、最大の特典は事業主特別加入ではないでしょうか?事実、私の扱いでは事務組合に加入していて特別加入をしていない方はほとんどいらっしゃいません。(特別加入には事業主特別加入・一人親方特別加入・海外派遣者特別加入の3種類があります)後述のように建設業関連では「特別加入は必須」になっています。

保険料額に関係なく分割納付が可能

労働保険料を分割納付できるのは概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合ですが、労働保険事務組合に労働保険事務を委託していれば、保険料の額にかかわらず、労働保険料の納付を3回に分割する事ができます。

労働保険関係事務を正確に処理

労働保険事務組合とは、そもそも、事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体ですので、国家資格を有する社会保険労務士会員が貴社の担当者となり事務処理を行います。事業主様は特別な知識も必要なく被保険者資格の取得および喪失・事業所関係・保険料の納付などの事務手続きを行うことができます。

それではデメリットはないのか

大きなデメリットは見られません。ただし、無料ではありませんので「事務組合費」と「社労士会員に対する顧問料」(事務所によっては事務手数料と表記する場合あり)がかかってしまうことがあげられます。私の所属する神奈川SR経営労務センター労働保険事務組合では「事務組合費」が16,800円かかります。「顧問料」は契約内容により異なりますが、私の事務所では最低5,000円/月がかかります。ご自分で事務処理が確実にできるなら、上記にあげたメリットと各種費用をよく考える必要があります。

建設業関連の方の特別加入

監督署の指導もあり元請けから事業主が現場に入るには労災保険に加入して無くてはならない。といわれる例がたくさん出ています。法律上は事業主は労災保険の適用除外ですから、特別加入をする必要があります。

お見積もり例

当事務所で労働保険事務組合にご加入いただくためには、

一人親方の場合は「第2種特別加入保険料」+「事務取扱手数料」が必要です。

事業主の場合は、「第1種特別加入保険料」+「事務取扱手数料」+「事務組合会費」に加えて、労働者の「労働保険料」+「労働保険新規加入手数料」(すでにご加入済みの場合は「委託替え事務手数料」)が必要です。

特別加入せずに、事務組合に加入する場合は「労働保険料」+「労働保険新規加入手数料」+「事務組合費」が必要です。

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