労働基準

割増賃金(残業代)の計算に含まれない賃金がある

割り増し賃金の計算の基礎となる賃金とは

なぜ割増賃金を支払う必要があるのか

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第37条第1項・第4項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)労働基準法では労働時間は一日8時間、1週間に40時間以内と定められていますが、労使協定を結べばそれ以上の時間労働させることができます。その際に、罰則的な意味合いを含めて割増賃金の支払いが必要であると定めています。

事業主にとっては割増賃金(残業代)の支払いは大きな負担です。時間内にすべての作業が終われば不要な経費ですし、もし、割り増しで無くてもいいなら、25%も安くすみます。この25%の割り増しには罰則的な意味合いがあると上にも書きましたが、どういうことでしょうか?

それは、事業主に労働時間の削減を意識させようとしているのです。長時間労働は肉体的な疲労の蓄積だけでは無くメンタルヘルス面での弊害も指摘されています。長時間労働を抑制するために割増賃金の支払いを義務づけるのです。

割増賃金率

法律で定められている割増賃金率は

  • 時間外労働・・・・・25%以上(1ヶ月60時間を超えるときは50%以上(*1))
  • 休日労働・・・・・・35%以上
  • 深夜労働・・・・・・25%以上

*1中小企業については当分の間25%以上

働き方改革により中小企業であっても2023年4月1日以降は月60時間を超える時間外労働に対して50%以上の割増率となります。なおなお、割増賃金の未払いに関しては労基法119条が適用され6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。人手不足により長時間労働が慢性化している中小企業には厳しくなりますが、長時間労働を続けていては新規採用もままなりません。(令和元年(2019年)8月追記)

 

おわかりのように「以上」なのでこれ以上支給しても良いのです。なかなか余計に出すところはありませんが。時間外労働が休日に行われた場合はそれぞれの割増率を加算して60%以上、深夜時間帯(午後10時から午前5時)の時間帯に行われた場合は50%以上の支払いになります。

割増賃金の計算方法

割増賃金の額は次の計算式により算出します。

割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間数×割増賃金率

1時間あたりの賃金額は次のように計算します。

1時間あたりの賃金額=月の所定賃金額÷1ヶ月の所定労働時間

ここで

1ヶ月の所定労働時間=(365-所定休日数)×1日の所定労働時間÷12(原則)

各月の所定労働時間は労働日数などで変動します。そうすると割増賃金の計算の基礎となる所定労働時間を毎月計算しなければならず、面倒なので1年間を平均したものを計算上使用しています。なので正しくは月平均所定労働時間ということになります。なお、変形労働時間制を採用している場合などは原則通りには行きません。

割増賃金の基礎とならない手当

割増賃金に基礎となるのは所定労働時間の労働に対して支払われるものなので「労働と関係の無い手当」については算入しないことができます。(労働基準法第37条第5項、同施行規則第21条)下記の手当は限定列挙といい、ここにあげられているもの以外はすべて算入しなければなりません。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、1から5の手当については同じ名称であっても算入しないことができるものとできないものがあります。

 

 

労働時間とそうで無いものの実際例

労働時間

労働時間になるもの

労働時間となるものは、労働基準法には「これが労働時間です。」という明示は無く判例により示されています。判例では「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働時間かどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれいるかどうかにより定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。」とされています。

すなわち、労働契約や就業規則に労働時間は9:00~18:00と定められていても、使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうかという事が問題になってきます。労働時間外でも使用者の指揮命令下にあれば労働時間と見なされます。

以下では、実際に労働時間に該当する作業について説明します。

始業前の準備、終業後の片付け

本来の業務の準備作業や後片付けについて、事業所内で行うことが使用者によって義務づけられている場合や現実に不可欠である場合には、指揮命令下に置かれたものとされ、労働基準法上の労働時間に該当すると判断しています。原則として使用者の使用者の個別的な指示や就業規則等により、使用者の指揮監督下で一定の作業が労働者に明確に義務付けられている場合、労働時間となります。

(詳細解説「作業準備時間は労働時間です」をみる→)

 

 

着替え

作業開始前の着替えの時間について、使用者から事業所内において行うことを義務づけられている場合などは、使用者の指揮命令下に置かれたものとされ、社会通念上必要と認められるものについては労働時間に該当すると判断しています。

使用者から義務付けられた作業服や保護具の着脱等に要した時間について、

労働者が就業を命じられた業務の準備行為と認めて、これを労働基準法上の労働時間としています(三菱重工長崎造船所事件 最高裁 平12.3.9)。

着替えに関しても次のページで解説しています。よろしかったらご覧ください。ここでのポイントも、何らかの形で使用者の管理監督下に置かれているかどうかになります。

(詳細解説「作業準備時間は労働時間です」をみる→)

 

手待ち時間

手待ち時間とは、使用者からの命令があればただちに業務に就くことができる態勢で待機している時間のことをいい、具体的には以下のような時間のことを指します。
労働基準法では、一定の時間を超えて働く労働者に対して、労働時間の途中に休憩時間を与えなければならないことが定められています。手待ち時間については、それが休憩時間なのか労働時間なのかという点が問題となります。

1.店員が顧客を待っている時間

過去の判例では、勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされている時間について、いわゆる手待ち時間であって休憩時間ではなく、労働時間に当たると判断しています。

2.夜間の仮眠時間

こちらも過去の判例で、「24時間勤務の途中に与えられる連続8時間の「仮眠時間」は、労働からの解放が保障された休憩時間とはいえず、実作業のない時間も含め、全体として使用者の指揮命令下にあるというべきであり、労働基準法上の労働時間に当たる」として、仮眠時間が労働時間であると認められています。

3.電話番の時間

昼休み中に電話番や来客対応をさせることについて、厚生労働省は「明らかに業務とみなされる」として、労働時間に含まれると示しています。

4.物品の運搬・運送

出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合は、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含むものと考えられます。

貨物取扱の事業場で貨物の積み込み係が貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合は、手待時間ですから労働時間に含むものと考えられます。

運転手が2名乗り込んで交互に運転にあたる場合に、運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠している場合は手待時間ですから、労働時間に含むものと考えられます。労働時間が8時間を越えれば、割増の残業代も支払わなければなりません。

 

(詳細解説「手待ち時間は労働時間」をみる→)

時間外労働の黙認

従業員の自己判断で残業をしても、事後承認が慣行となっている場合は、格別の理由がない限り時間外労働として扱わなければなりません。

勉強会・研修

勉強会や研修に参加している時間についても、労働時間として認められる場合があります。過去の判例では、労働者が月に1~2回程度、少なくとも20分以上を費やして開催される研修会に参加していた時間を時間外労働時間であると認め、会社に対して割増賃金を支払う義務があると判断しています。

勉強会や研修については、参加が義務づけられている・欠席による罰則などがある・出席しなければ業務に最低限度必要な知識が習得できない、といった場合には、労働時間として認められる可能性があるといえます。

参加が義務づけられている研修等は労働時間となります。

例えば、業務命令で休日に行われる合宿研修は、勤務扱いをしなければなりません。休日に労働させていることになるからです。研修終了後に振替休日を与えるか、休日労働として35%増しの割増賃金の支払いが必要となります。

安全衛生教育の時間

法に基づく安全衛生教育については、労働時間内に行うのを原則とします。労働時間と解されますので、法定労働時間外に行われた場合には時間外労働になり、割増賃金を支給しなければなりません。

健康診断

健康診断に関しては、厚生労働省が公式の見解を示しています。これによると、職種に関係なく定期的に行う「一般健康診断」は、業務遂行との直接の関連において行われるものではないことから、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきとしつつ、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいとされています。

なお、法定の有害業務に従事する労働者が受ける「特殊健康診断」は、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断であることから、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間に該当し、賃金の支払いが必要であるとされています。

始業前の朝礼

使用者の指揮命令によるか否かで判断されることになります。

朝礼で点呼をとったり、当日の仕事の流れを説明するような場合は強制参加であるため、労働時間となります。

強制ではないが、朝礼への参加状況が人事考課に関係する場合も労働時間と判断されます。

帰宅後の呼び出し

労働に中断があっても、1日につき8時間を超える場合は時間外労働になります。

そのための往復の通勤の時間は、労働基準法上は通常の通勤時間と同一のものとして労働時間には該当しないものと解されます。往復の通勤の時間賃金の支払いは不要です。

有給休暇中に緊急の呼び出しで出勤したという場合、原則、有給は取得しなかったものとして扱われ、通常の出勤日となります。賃金も労働時間に対して支払うことになります。

労働時間とみなされない時間

以下のような作業に要する時間については、労働時間とみなされないため注意が必要です。

通勤

通勤自体は働くために必要な作業となりますが、通勤時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としては判断されません。

タイムカードの打刻

事業場に入ってから、タイムカード等の置いてある所まで行くのに要する時間は、労働時間には入りません。(三晃印刷事件 東京地裁 平成9.03.13)

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間については、労働時間に含めるか否かは、「就業規則に定めがあればその定めに従い、その定めがない場合には職場慣行によって決めるのが妥当」(日野自動車工業事件 最高裁 昭59.10.18)とされています。作業するために不可欠なものであっても、働くための準備行為なので労働力そのものではないので、更衣時間については原則として労働時間に含めません。

朝の掃除、準備

従業員が自主的に掃除などをしている場合は、本人の自発的な行動とみなされ、労働時間にはなりません。

始業前の掃除やお湯を沸かしたりすることを命じられていたり、当番制によって事実上強制になっている場合で、黙示の業務命令があるとみなされた場合は労働時間となります。

始業10分前の出勤を指示された場合

「使用者の指揮命令下にあって労働力を提供している時間」にあたるかどうかにかかってきます。「実際に働いているかどうか」ということで、拘束力が弱く業務を行っていない場合は、指揮命令下にあって労働力を提供しているとは言えず、早出とみなされる可能性は低いと思われます。

朝礼、ミーティング等で、参加が義務づけられている場合には労働時間となり、早出として時間外手当を支払う必要があります。

始業前のラジオ体操

「参加は従業員に強く奨励されていたが、義務付けられていたということはできない」として、労働時間として認めなかった判例があります(住友電気工業事件 大阪地裁 昭58.8.25)。

休憩時間・始業・終業時刻の前後の自由時間

使用者の拘束下にありますが、労務提供のための指揮命令は受けておらず、労働から解放されているため、労働時間になりません。

自発的な残業

原則として、自発的に行なう残業については、労働時間として取り扱う必要はありません。残業は、使用者の業務命令があって初めて生ずるものだからです。

明確な業務命令がなかったとしても、残業を行なう労働者を黙認していた場合などは、黙示の指示があったものとして労働時間となります。

持ち帰り残業

持ち帰り残業とは、書類を自宅に持ち帰ったり、メールでデータを自宅のパソコンに送信しておいて、自宅で仕事(残業)を行なうことですが、自発的に行なう場合は原則として労働時間にはなりません。

作業後の入浴

労働安全衛生規則では、「事業者は身体または被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身もしくはうがいの設備、更衣設備または洗濯のための設備を設けなければならない」ことを定めています。ただし、入浴時間などについての規定はなく、入浴時間については使用者の指揮命令下にあるとはいえないと解されています。
厚生労働省の通知では、坑内労働者の入浴時間について、通常労働時間に算入されないと示されています。

一般健康診断の受診時間

従業員一般に対して行われる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないため、受診のために要した時間は労働時間として扱わなくても差し支えありません。

特定の有害な業務に従事する労働者について行われる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで実施されなければならない性格のものです。実施に要する時間は労働時間と解されます。

就業時間外の教育訓練

使用者が実施する教育に参加することについて、出席の強制がなく、自由参加のものであれば時間外労働にはなりません。このあたりのことを、就業規則には明確に定めておくとよいでしょう。

昇進・昇格試験を休日に実施した場合は、休日出勤にはなりません。報酬などの向上を目指すための昇格試験なので、労働時間とはみなされないのです。

受験しなかったときに給料の減額などの受講者にとって不利益な措置があるときは、労働時間とみなされます。

休日の接待ゴルフ

原則として休日労働とはなりません。

本人はプレーせず、コンペの準備や進行、送迎等の接待の任務をもって参加する担当者の場合は、それが使用者の命令によるものであり、かつ主たる業務として行なわれる限り労働時間となります。なお、開催が平日であれば、通常の労働時間として扱ってよいでしょう。

出張の移動時間

出張先への移動時間については通勤時間と同様に、その間は、会社の指揮・監督下にあるわけではなく、労働時間では無いとする見方が有力です。裁判例には、「出張の際の往復に要する時間は労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがって時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とするものがあります(横浜地裁判決昭和49年1月26日)。つまり、移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解されます。
ただし、一度会社に立寄ってから向かう場合や、出張先から会社へ戻る場合にあっては、その時間は労働時間にあたると一般的には解されています。たとえば、営業で取引先をまわる場合などが想定されるでしょう。
また、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含まれると考えます。上司が同行しての出張の場合にも、会社の指揮・監督下にあるとして、労働時間にあたると解されています。
なお、労働基準法38条の2で「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定されており、通勤途上による寄り道で、その時間の把握が困難な場合には、原則として所定労働時間(みなし時間)とし、時間外労働として扱わなくてもよいとされます。たとえば、弁護士の業務を例にとれば、朝裁判所に寄ってから事務所に行くという場合には、仮に就業開始時刻より早く裁判所に寄ったとしても、時間外労働と扱われないことになります。

出張中の休日に移動のため旅行する場合は、特段の指示がない限り労働時間に含める必要がないとされます(昭和23年3月17日 基発461 昭和33年2月13日 基発90号)。しかし、何らかの手当を支給するなどの方法で報いるのが良いと考えます。

自宅待機をさせた場合

場所的には自宅に拘束されるものの、その時間は自由に利用できます。事業場で使用者の指揮監督のもとに拘束される手待ち時間とは異なるものと考えられます。自宅待機の時間を「労働時間」とみなす必要はありません。

自宅待機について、賃金を支払いの定めはありません。しかし、休日に待機命令を行うことは、強制力をもって行うことには問題があり、労働時間とはならず、その手当も宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当と思われます。
休日に業務遂行を前提として会社に「待機」させる場合は、待機時間は労働時間となりますが、非常のときに備えて待機するだけのときは「日直」と扱うこともできます。宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当でしょう。

労働契約の労働時間が実態とかけ離れている。

雇用契約書は労働関係の基礎となる者です。

雇用契約の問題

そもそも、求人に応募して、お互いに労働条件について話し合い、確認して、合意した場合に初めて、働き始めるのですが、その際には「労働契約書」を作成する必要があります。労働基準法では、労働契約の締結に当たり「書面で明示するべき事項」が定められています。書面が交付されないのは法律違反になります。

そうは言っても、小さな会社の場合は口頭だけで済ませてしまい働き始めると言ったことは普通にあります。こうした場合「約束が違う」などトラブルの元です。しかも明示された労働条件が事実と異なる場合労働者は一方的に労働契約を打ち切ることができる。といっているホームページも有りますが、そうした場合、労働者の暮らしはどうするのでしょうか?とても現実的な選択とは思えません。事業主の側としても余計なストレスを生ずるだけです。必ず書面を交付し、それを守るようにしましょう。

実際に労働時間が雇用契約書と異なる場合の扱い

実際の労働時間が労働基準法に則っていて、賃金もきちんと支払われているのであれば大きな問題はありません。雇用契約書を事実に合わせて修正しましょう。しかし、実際の労働時間(残業をしている場合など)に基づいた給与計算を行わずに、給与計算だけ就業規則の労働時間(法定労働時間通り)に基づいていたりすると、多くの場合「不払い残業代」の問題を生じます。このような場合労働時間によっては変形労働時間制を使用することにより、法定労働時間内に収まるケースもあるので検討してみる必要があるでしょう。但し、これらの変形労働時間制は労使協定の締結など一手間かかるのが難点ですし、運用がまずければかえって問題を増幅することにもなりかねません。まずは、監督署あるいはお近くの社労士にご相談してみてはいかがでしょうか?

注意するべきケース

正社員の労働時間の3/4時間・・・これは社会保険に加入するかしないかがかかわってきます。このように必ず守らなければいけない場合があります。36協定を締結しておらず、残業なしの会社では週40時間を超えてはいけません。などです。

 

 

労働時間の短い労働者の社会保険と有給休暇

短時間労働者の特徴と言えば社会保険に加入できないことです。

短時間労働者の社会保険

労働時間が通常の労働者と比べて短い者の社会保険の加入条件は次のようになっています。

雇用保険 週所定労働時間が20時間以上で強制加入。

社会保険(健康保険・厚生年金) 通常の労働者の4分の3以上で強制加入。通常の労働者が週40時間なら30時間以上。35時間なら25.5時間以上で強制加入となります。

労災保険 労働時間に関係なく強制加入(適用除外に該当する場合を除く)

短時間労働者の有給休暇

短時間労働者の場合、有給休暇は比例付与となります。

週の労働時間が30時間未満で所定労働日数が週4日以下(年間所定労働日数の場合は216日以下)の短時間労働者は、その所定労働日数によって、以下のような付与日数が決められています。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

例えば、週3日のパートであれば、雇入れ時から半年(0.5年)の時点で5日の有給休暇を付与されます。

なお、パートであっても1週間の所定労働時間が30時間以上あるいは、1週間の所定労働日数が5日以上、または1年間の所定労働日数が217日以上であれば、正社員と同じ有給休暇が付与されます。ここが大事です、たとえ週4日の勤務でも週の労働時間が30時間以上なら正社員と同じ日数が付与されるのです。

パートタイマー(短時間労働者)への社会保険(健保・厚生年金)適用の拡大

平成28年10月より、週の所定労働時間が20時間以上の者にまで適用されることとなりました。

 

 短時間労働者の各保険の適用表

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 週20時間未満
厚生年金保険    〇     ◎
健康保険    〇     ◎
雇用保険    〇     〇
労災保険    〇     〇     〇

*  ◎  新規で社会保険の適用になる短時間労働者

以下のすべてに当てはまる者をいいます。

1.週所定労働時間が20時間以上

2.年収が106万円以上

3.月収が88,000円以上

4.雇用期間が1年以上

5.企業規模が従業員501名以上(*平成31年9月30日までの時限措置)

労働者の保険料負担

各種保険料率 新制度導入前 新制度導入後
厚生年金保険料率 0% 18.3%
健康保険、介護保険料率 0% 12%

ということで一気に30%超の負担増(事業主負担15%超の負担増)になります。社会保険加入はいいけれど結構大変です。しかし、負担有るところ給付ありです。特に年金は将来かならず、「ああ、あのときは入れて良かった」と思うはずです。

管理監督者や裁量労働制の労働者の労働時間管理

管理監督者、完全月給制の者、裁量労働制の適用者などは労働時間の管理をしなくても良いのか

働き方改革により労働時間の把握は義務化へ

労働安全衛生法の施行規則(安衛則)の改正で労働時間の適正把握の法制化が令和元年4月より実施されました。

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を守り快適な作業環境を確保することを目的とした法律で、監督署の立ち入り調査では必ず確認や指導が行われる主要法令の一つです。この労働安全衛生法に、「労働時間の把握」が使用者の義務であると明記されました。

厚生労働省発行のガイドラインによると

現状(2018年6月現在)では、厚生労働省発行の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、主に以下のポイントが明記されています。

・使用者(事業主)は労働者の働いた時間を把握する

・参加義務のある研修や教育訓練、業務に必要な学習も全て「労働時間」とみなす

・使用者は労働者の仕事の始まりと終わりの時間を明確に把握・記録する

・機器やシステム使っての”客観的な記録”が基礎。労働者自らも確認をする

・自己申告制にする場合はガイドライン遵守及び十分な説明を行う

・自己申告とシステムで記録された労働時間に大きな差が出た場合は実態調査を実施する

・使用者は労働者ごとに労働時間・日数、時間外、休日、深夜労働の時間を適正に記録する

こうしてみると、当然のことばかりと思う方もいらっしゃるかもしれません。それにもかかわらず、サービス残業や持ち帰り残業などが横行しています。

労働時間の把握はなぜ必要

労働時間の適正把握は、賃金計算トラブルやサービス残業(未払い残業代)の予防・解決の面からも必要ですが、長時間労働による健康障害の防止の観点からも大変重要です。

例えば、「管理監督者」は労働基準法第41条で労働時間、休日及び休憩に関する規定の適用対象外となっており、管理監督者が残業を行なっても労基法上の時間外労働手当を支払う義務は無く、逆に遅刻・早退しても賃金控除されることはありません。その一方で長時間労働が続けば健康が害される可能性が高まります。そうしたリスクを避ける為、毎日の厳格な出退勤時刻の管理は出来ませんが、通常どれぐらいの勤務時間になっているのかといった勤務実態の掌握や必要に応じた指導は事業者として当然に行なわなければならないということです。

万が一、過労死や過労自殺が生じた場合には、管理監督者であることを理由に企業責任が免れることが出来るわけではなく、多額の損害賠償につながります。「労働基準法で労働時間に関する規定の適用対象外である」からといって「長時間労働による健康障害防止の必要性」が無いわけでは無いのです。

全ての労働者について、少なくともタイムカードなどの客観的な記録に基づく労働時間管理を行うようにしましょう。

 

健康診断の種類と労働時間

健康診断には2種類ある

健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断があります。一般健康診断とは、職種に関係なく、労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。一般健康診断は労働者の健康の保持増進を目的として行われ、労働とは直接の関係はありませんが、事業主にその実施義務が課せられていることからできる限り所定労働時間に行うことが望ましく、特殊健康診断は、労働内容と密接な関係があることから所定労働時間内に行わなければなりませんし、万が一所定労働時間内に行われなかったときは賃金(割増賃金)が支払われなければなりません。

1 一般健康診断(安衛法第66条第1項)

安衛法に規定されている健康診断で、労働者の一般的な健康診断です。雇入れ時の健康診断や、1年以内に1回以上の受診が必要な定期健康診断は、この一般健康診断に分類されます。40才以上の方に行う健康診断と特定健診(いわゆるメタボ健診)の違いは視力・聴力・胸部X線・心電図および貧血の検査が特定健診にはありません。従って、特定健診を自分で受けたからといって、その結果を提出しても会社が行う健康診断を受けなくて良いと言うことにはなりません。

2特殊健康診断

2-1 有害業務の特殊健康診断(法第66条第2項)

安衛法やじん肺法に規定されている特定の有害業務に従事する労働者を対象とする健康診断です。労働安全衛生の観点から行われるもので、有害業務が健康に与える影響を調べたり確認したりします。

2-2 有害業務の歯科医師による健康診断(法第66条第3項)

歯またはその支持組織に有害なガス、蒸気、粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者を対象に実施します。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りん等のガスを発生する場所における業務を言う。

2-3 通達による特殊健康診断

業務の種類によって、法令に規定されている健康診断とは別の健康診断として行政から受診を勧奨されているものです。強制的なものではありませんが、必要な人には受診させておくべきです。

一般財団法人全日本労働福祉協会のHPに詳しく掲載されています。

健康診断は業務時間に行うべきか?

これらの健康診断を労働時間内に受診するべきなのか、あるいは、労働時間外に受診すべきか?という点について考えてみましょう。それには、次のような通達が出ています。

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払い(昭和47年9月18日、基発第602号)

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般を対象とする一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施を義務づけたものであり、業務遂行との関連において行われるものでは無いので、その受診に要した時間については、当然に事業者の負担するべきものではなく、労使協議して決めるべきものであるが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠な条件であることを考えるとその受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが、望ましい。

特殊健康診断は事業の遂行に絡んで当然に実施しなければならない性格のものでありそれは所定労働時間内に行われることを原則とする。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割り増し賃金を支払わなければならない。

健康診断に要した時間の考え方

この通達を簡単に言い換えてみます。

1 一般健康診断

一般健康診断は、特殊健康診断とは異なり、すべての会社ですべての労働者を対象(パート等を除く)に行われるものです。雇入れ時健康診断と定期健康診断が代表的なものです。一般健康診断は、使用者に実施義務があります。健康に労働を行うために行われます。

しかし、業務との直接の関連はないので健康診断を業務時間内に実施するか、業務時間外にするかはそれぞれの会社ごとに決めることになっています。「当然には事業者が負担すべきものではなく」というのは、会社が賃金を支払わなければいけないと決まっているわけでは無い。しかし、会社には健康診断の実施義務があるので、業務時間内に実施する、もしくは賃金を支払うことが適当だと思います。また、従業員の健康を確保することは、会社を運営するにも必要なことですから、それに要した時間に賃金を払う方が適切と思います。

2 特殊健康診断

危険または有害な業務として法で定められている職業には特殊健康診断が必要で、事業主の責任で当然に実施すべきものです。

一般健康診断とは違い、特殊健康診断は有害とされる業務を行う上で必要な健康診断なので、業務の一環として所定労働時間内に行うことが原則です。ですから、業務時間外に行った場合には、賃金(割増賃金)の支払いが必要です。

社内旅行・運動会などの社内行事の労働時間管理

社内の行事の参加を強制するとそれは労働になります。

社内行事が労働時間となるかどうかについては、「使用者の指揮命令下」に有るかどうかが問題となり、完全自由参加であり不参加の場合にも何らペナルティがない場合は労働にはなりません。

一方、事実上強制となる社内行事や社内旅行の場合、それは労働に当たり、その時間は労働時間となり賃金が発生します。こうした行事は業務のある平日ではなく休日に行われることが多いと思われるので、時間外手当や休日手当にも注意が必要です。

なぜ、社内行事への参加を強制できるのか

使用者には労働契約に付随して「業務命令権」という権利があり、この「業務命令権」の一環とし社内行事への「参加強制」しても違法ではありませんし、従業員はそれに従う必要があります。当然それに対しては賃金(時間外や休日であれば割増賃金を含む)が支払われます。

同様に考えて、業務時間外の社内行事に対しては参加強制を、適法に行うためには業務の一環(すなわち「残業」)として行う必要があります。

参加したくないにもかかわらず、社内行事やイベントに参加を強制されたのであれば、これはすなわち、会社の指揮監督下に置かれていることになります。したがって、参加強制をされた社内行事は、「労働時間」です。参加強制されていなければそれは労働時間ではありません。参加せずともいいのです。

表向きには「自由参加」としていても強制と取られるときもあるぞ!参加強制の例

  • 会社からの命令で、絶対に参加するよう言われている。(直接的強制)
  • 「自由参加」だが、不参加だと賃金を控除されたり、パワハラや職場いじめの対象になる。また、「協調性がない」といわれ低い人事評価をされる。(間接的強制)
  • 社内行事やイベントの幹事、実行委員会などに指名され、事実上出席せざるを得なくなる。(間接的強制)

建前だけ「自由参加」としていても強制参加と見なされる場合があることに注意しましょう。参加を強制した場合には業務と見なされ賃金が発生します。

在宅勤務の労働時間管理に関する私見

在宅勤務の労働時間管理

在宅勤務に関してはネットに接続できる環境さえあれば、十分可能でパソコンやテレビ電話により会社に出勤するのと同様の作業環境を整えられる企業は多数存在します。後は在宅勤務する側の資質の問題であると考えられるので「見なし労働時間」を適用するのは事業所外勤務の場合と同様に芳しくは無いと思います。あくまで私の意見であって皆さんの会社で適用するのは自由です(しかし、その後問題が発生する可能性は十分あると思います)。参考までに在宅ワークに見なし労働時間制を適用する場合の要件は次のように定められています。

在宅労働のみなし労働時間制(テレワークQ&A(厚生労働省発行より)

①労働者が事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難な場合には、みなし時間により労働時間を計算できる場合があります。
②みなしの対象となるのは所定労働時間が原則ですが、所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合には、そのような通常必要となる時間がみなし時間となります一定の要件とは次の3点の要件を全て満たした場合です。

① テレワークが、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
② テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと
・「パソコンが使用者の指示」とは、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することについて、使用者から認められていない状態をいいます。
・「通信可能な状態」とは、使用者が労働者に対して、パソコンなどの情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態、すなわち、労働者が具体的な指示に備えて待機している手待ち状態で待機しているか、または、待機しつつ実作業を行っている状態をいいます。
これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで、従業員がパソコンから離れることが自由である場合などは、「通信可能な状態」には該当しません。

③ テレワークが、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
・「随時使用者の具体的な指示に基づいて行われる」には、例えば、テレワークの目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、これらの基本的事項について変更を指示することは含まれません。

古い先生の指導では(先生が古いという意味では無く古い時代の指導という意味です)裁量労働制と見なし労働時間制を組み合わせればいいというものが多数見受けられますが、それらは、最近のIT分野での発達が考慮されていません。本人への信頼を前提に、「 電話、メール等で常時使用者の指揮命令を受けながら労働させ、業務記録を記録、報告させる 」 というのが、最新の運用方法であると思われます。言い換えれば、本人が信用できないならば、在宅勤務制は採用するべきではないという事になります。在宅勤務でも残業時間を含めた労働時間を把握することは必要です。安全衛生の観点からも必ず把握するようにしてください

会社外での営業の場合の労働時間の把握方法

会社外での営業の際の労働時間の把握方法

事業場外みなし労働時間制

会社外での営業の際の労働時間は使用者が直接管理することができません。労働者の自主的申告や事業場外みなし労働時間制を利用するのが一般的でした。
私が社会人になった頃は携帯電話というものがありませんでしたから、朝「行ってきます。」と会社を出てしまえば、何をやっているかはわかりません。夜8時になって帰社すればその間は労働していたことになります。それでは会社の負担は際限なく上がってしまいます。そこで、事業所外みなし労働時間という制度が当時考え出されました。その当時は合理的であったと思います事業場外みなし労働時間制とは、外回りなどで会社内にいない時間の労働について「◯時間」労働したものとみなす制度です。

例えば、前述のように1日中外回りをしている営業職の場合、事業場外のみなし労働時間を「8時間」とみなした場合、実際の労働時間が7時間でも9時間でも8時間働いたとみなし、賃金が支払われます。

しかし、この制度はあくまで労働者が事業場内にいないなどのため、使用者が具体的な指揮監督ができず、労働時間を算定することが困難な場合のための制度であって、使用者が労働時間を把握できる場合はその把握した時間により賃金が支払われます。

時は流れて、携帯電話などの通信機器の発達により、会社が外に出ている労働者の行動を把握することや指揮監督すること十分可能になっています。故に、この「事業所外みなし労働時間」を適用することは難しいのでは無いかと私は思っています。

 

まとめ

使用者は、労働時間の把握義務を負っていますので、何らかの方法で労働時間を管理し、時間外労働の時間も含めて把握する必要があります。労働基準法上の労働時間の意味について、最高裁は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」としています。この「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」とは、現実に労働力を提供している時間、だけでなく実際に使用者の黙示の指示によって、その業務に従事する時間も含むものと考えられています。(「実労働時間」といいます。)

通信機器が発達した現代では、労働時間の把握は容易になってきていますのでこのみなし労働時間制を適用するのはかなり慎重に判断する必要があると思います。

所定労働時間と法定労働時間

所定労働時間と法定労働時間

法定労働時間は法律で定められた労働時間

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間で、1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められています。また、1日6時間以上の場合は45分間、8時間以上の場合は1時間以上の休憩を取ることも義務づけられています。

これらは、最低条件であって、実際の労働時間は事業所ごとに定めなくてはなりません。時間外労働(残業など)や休日出勤を行わせる場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届け出が必須です。

所定労働時間とは企業ごとに定める労働時間

所定労働時間とは、企業ごとに定めた労働時間のことです。企業は法定労働時間の範囲内で自由にその所定労働時間を定めることができます。

所定労働時間は、人材の定着率にも大きく影響します。給与が同じであっても、所定労働時間の長さによって、働く人の負担が変わるからです。長時間労働が行われれば、労働者のケガや病気につながる可能性が高まり、負担が大きければ、人材の確保に影響を及ぼすことは容易に想像できます。
労働時間は実務上どんなときに必要になってくるのか具体例を見てみましょう。

月の平均所定労働時間を計算するのは残業代の計算

労務管理のなかでも残業代を計算する上で、月平均の所定労働時間は重要です。平均で求める理由は、月によって労働日数が変わるからです。残業代を計算するときに月ごとに所定労働時間が変わらなくてもいいように、平均で考える必要があります。

年間の所定労働時間(年所定労働時間)を計算しよう

月の平均の所定労働時間を算出するには、まず年間の所定労働時間を計算します。年間の所定労働時間は、1年の日数から年間休日を引いたものに、1日の所定労働時間をかけて算出します。例えば、年間休日日数が115日なら、365から115を引くので、250日となります。所定労働時間が8時間だった場合、250に8をかけて、2000時間となります。

年間の所定労働時間を計算したら、その数字を月数である12で割ると、月の平均所定労働時間が算出できます。前述の例では、2000時間を12カ月で割るので、月の平均所定労働時間は166.6となります。

所定労働時間と残業との関係

企業によって、所定労働時間と法定労働時間が異なる場合もあるでしょう。法定労働時間は8時間ですが、所定労働時間は7時間という場合です。もし、このような場合で社員が8時間の労働をしたら、差にあたる1時間は、残業扱いになるのでしょうか?これは、会社の方針で変わります。残業代は割増賃金に相当しますし、残業の定め方によって給与も変わります。

例えば、「法定労働時間以上の労働を残業と定める」としていた場合は、8時間を超えない場合、「残業扱い」にはなりません。しかし、「所定労働時間以上であれば残業と定める」としていた場合は、1時間分の割増賃金が支払われます。

こうした方針は、就業規則や雇用契約書にきちんと記載しなくてはなりません。

 

労働時間とは

労働時間とは

労働時間とは労働者に労働義務がある時間です。この労働義務があると言うことについていくつかの異なった解釈があり様々な労働問題の発生原因になっています。事業主としてはなるべくこの振れ幅を無くし働きやすい会社にしていくことが求められます。労働者としては決められたルールに則り仕事をすることが求められます。

労働時間は何時間か

法定労働時間

2018年1月現在一般的な会社の基本的な労働時間は労働基準法で一日8時間、1週間40時間以内と定められています。この、労働基準法で定められた労働時間を法定労働時間と言います。

法定労働時間は1日8時間、1週間40時間

週の法定労働時間が40時間では無い場合

特例事業(商業、映画・演劇業、保健衛生業、および接客娯楽業)で常時10人未満の労働者を使用する場合、特例として法定労働時間が週44時間までとされています。(労働基準法施行規則25条の2)
一つの事業で複数の事業所がある場合、事業所単位で適用されます。ただし、労働時間管理がそれぞれの事業所で独立して行われていなければなりません。

このの判断を誤ると、後々、監督署から指導を受け未払い残業代として多額の出費を強いられることになります。自分に都合のいい解釈をせずに社労士、監督署に相談してください。

具体的にはこんな事業所です。

①商業 (小売り、卸売り、倉庫、理美容、駐車場、不動産管理、出版などの事業)

②映画・演劇業 (作品を見せる映画館、劇場のことです。撮影や編集の事業ではありません)

③保健衛生業 (診療所、老人ホーム、保育園、福祉施設、銭湯など)

④接客娯楽業 (飲食店、ホテル、パチンコ、ゴルフ場、遊園地など)

例として、一つの医療法人が2つの診療所を経営しておりA診療所では医師以下6人の勤務者がおり、B診療所では同じく7人の勤務者が居る場合、法人全体としては13人となりますが、AおよびBのそれぞれの診療所ではそれぞれ6人、7人となりそれぞれの診療所でおのおの労働時間管理をしている場合は特例事業となるが、法人全体として管理している場合は13人と成り、特例事業には該当しないことになります。

また、常時9人で回している高齢者向け洋品店が年金支給の時期だけアルバイトを3人雇用した場合はどうなるのか等、難しい場合が多々あります。

 

所定労働時間

所定労働時間とは会社と労働者の間で就業規則や労働契約書で定めた労働時間のことです。所定労働時間は、法定労働時間を超えることはできません。法定労働時間を超えた所定労働時間はその超えた部分は残業時間と見なされます。法定労働時間より短い所定労働時間は有効です。

休憩時間は労働時間では有りません。

休憩時間は自由に利用することができる限り労働時間には当たりません。しかし、電話番等で自由に利用できない場合は労働時間と見なされる場合もあります。

実際の例

実際に9時から17時まで休憩12時から13時までの1時間で勤務した場合の労働時間は7時間となります。

 

男女雇用機会均等法 育児・介護休業法のあらまし

現在、労務管理のあらゆる場面で「男女間の性差による差別は禁止」されています。
ただし、
女性を優遇することが特例として認められる場合
があります。それは、職場に事実上生じている男女間格差を是正して、男女の均等な機会・待遇を確保するために女性を有利に扱う場合です。

また、育児休業法では
子が1才未満の場合育児休業をすることができます。
子が3才未満の場合は短時間勤務時間制度・所定外労働時間の制限
子が就学前なら子の看護休暇・法定時間外労働の制限等の施策があります。

介護休業法では対象家族が要介護状態になるたびに1回、通算93日以内の介護休業を取得できます。

などなど、重要な情報が満載のリーフレットです。

是非ダウンロードしてご覧ください。

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育児・介護リーフレット

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