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有給休暇時の賃金と平均賃金

有給休暇時の賃金(平均賃金)

有給休暇取得時の賃金

有給1日につき、平均賃金、もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う必要があります。

平均賃金とは

平均賃金は、労働基準法で定められている保障や減給の制限額を算定する際に、労働者の生活を保障するためのものですから労働者の通常の生活賃金を反映出来るように算定することを基本とし、

原則として算定事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(暦日数)で除した金額をいいます。(労働基準法第12条)
すなわち、

平均賃金=過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月間の総日数(総暦日数)

労働基準法第12条より

平均賃金を算定する場合はどんなときか?

(1)労働者を解雇する場合の予告に代わる解雇予告手当-平均賃金の30日分以上(労基法第20条)
(2)使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当-1日につき平均賃金の6割以上(労基法第26条)
(3)年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金(労基法第39条)
(4)労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等(労基法第76条から82条、労災保険法)
※休業補償給付など労災保険給付の額の基礎として用いられる給付基礎日額も原則として平均賃金に相当する額とされています。
(5)減給制裁の制限額-1回の額は平均賃金の半額まで、何回も制裁する際は支払賃金総額の1割まで(労基法第91条)
(6)じん肺管理区分により地方労働局長が作業転換の勧奨または指示を行う際の転換手当- 平均賃金 の30日分または60日分(じん肺法第22条)

労働基準法各条より

算定事由の発生した日とは

(1)解雇予告手当の場合は、労働者に解雇の通告をした日
(2)休業手当・年次有給休暇の賃金の場合は、休業日・年休日(2日以上の期間にわたる場合は、その最初の日)
(3)災害補償の場合は、事故の起きた日または、診断によって疾病が確定した日
(4)減給の制裁の場合は、制裁の意思表示が相手方に到達した日

以前3か月間とは

算定事由の発生した日の前日から遡って3か月です。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月となります。賃金締切日に事由発生した場合は、その前の締切日から遡及します。
なお、次の期間がある場合は、その日数及び賃金額は先の期間および賃金総額から控除します。

(1)業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間
(2)産前産後の休業した期間
(3)使用者の責任によって休業した期間
(4)育児・介護休業期間
(5)試みの使用期間(試用期間)

労基法12条より

賃金の総額とは

算定期間中に支払われる、賃金のすべてが含まれます。賃金の支払いが遅れているような場合は、未払い賃金も含めて計算されます。ベースアップの確定している場合も算入し、6か月通勤定期なども1か月ごとに支払われたものとして計算します。

日々雇い入れられる者(日雇労働者)

稼動状態にむらがあり、日によって勤務先を異にすることが多いので、一般常用労働者の場合と区別して以下のように算定します。

日雇労働者の平均賃金

(1)本人に同一事業場で1か月間に支払われた賃金総額÷その間の総労働日数×73/100
(2)(当該事業場で1か月間に働いた同種労働者がいる場合)
同種労働者の賃金総額÷その間の同種労働者の総労働日数×73/100
※1か月間に支払われた賃金総額とは算定事由発生日以前1か月間の賃金額

原則で算定できない場合、原則で算定すると著しく不適当な場合

上記の原則で算定できない特殊な事案については,平均賃金決定申請により都道府県労働局長が決定することとなりますので、所轄の労働基準監督署に相談してください。

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とは

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とは、所定労働時間が8時間の場合は「8時間労働した場合に支払われる賃金」のことです。 つまり、時給制の場合は所定労働時間に時給額をかけたものですし、日給月給の場合、1日欠勤した場合に欠勤控除される賃金額がそれに当たります。

平均賃金と所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の違い

両者の違いは、平均賃金には、時間外手当やその他諸手当を含んで算定をする一方、所定労働時間が支払われる通常の賃金では、それらを含まない、ということです。ただし、平均賃金の算定では、過去3ヶ月間の全出勤日数ではなく総歴日数で賃金総額を割るため、どちらの方が金額高くなるかは会社や労働者の働き方によって変わってきます。
どちらで支払うかは就業規則その他これに準ずるものに定めておく必要があります。 また、労使協定を結べば、健康保険法で定められている標準報酬日額(標準報酬月額を30で割ったもの)で、有給分の賃金を支払うこともできます。

パートタイマーの平均賃金

パートタイマーなど時給制の労働者の平均賃金はどのように算定するのが正しいでしょうか?平均賃金額は通常「平均賃金=過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月間の総日数(総暦日数)」となりますが、日給者・時給者・欠勤が多い者などは「3ヶ月間の賃金総額÷労働日数×60%」も計算し後者の方が高ければ後者が平均賃金となります。ただし、話を戻して、有休休暇時の賃金を考えますと就業規則に「所定労働時間勤務した場合の通常の賃金」または「平均賃金」のいずれかを支給するとの定めがあればそれに従うことになります。通常は「所定労働時間勤務した場合の通常の賃金」としておいた方が、計算が簡単です。ただし、パートタイマーの場合は一日の所定労働時間が異なる場合がありますので注意が必要です。たとえば一日の所定労働時間が5時間の場合が3日と4時間の場合が1日の場合(雇用保険加入を回避するとこうなる場合があります)答えは、「有休を取得した日に労働した場合に支払われる賃金を支払う」です。平均賃金で支払う定めをしておけば平均賃金を毎回計算して支払う必要があります。

有給休暇とは

有給休暇の取得を上手に進め企業経営に生かしましょう。

一昔前の経営者には「従業員に休みを与えるなんてもってのほか」とか「うちの会社に有給休暇なんて制度は無い」といった考え方をしている方がいらっしゃいました。まあ、ご自分は寸暇を惜しんで働き、成功してきたのですから、その成功体験に縛られてしまうのも理解できなくは無いですが、有給休暇は法律で認められた労働者の権利で有り、また、休暇をうまく活用することにより心身ともにリフレッシュして効率アップに繋がるといった効果も現在では認められています。

有給休暇はどのような労働者にも必ず与えなければいけないのか

年次有給休暇の権利は労働基準法第39条の所定の要件を満たした労働者に、法律上当然に生ずるものです。そして正規・非正規を問わず所定の日数付与しなければいけません。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、会社を欠勤すると賃金は減額されるのが普通ですが、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金がそのまま支給される休暇のことです。従って、病気のためとか理由を限定されることは無く、旅行に行ったり、単に家でぶらぶらしてても、パチンコに行くためでもかまいませんし、そもそも会社に理由を告げる必要はありません。

しかし、後述するように会社には日時をずらしてもらう権利がありますので、その際には、どうしてもこの日でなければならない理由を告げることが必要になるかもしれません。(法的には必要はありませんが、会社で仕事をする以上あまり突っぱねてしまうと後々やりづらくなってしまいますからほどほどにしましょう。)

年次有給休暇の付与要件

年次有給休暇は「雇い入れの日から6か月継続して勤務」し「その期間の全労働日の8割以上出勤した」労働者に対して付与されます。

一般労働者の年次有給休暇

上記の要件を満たした労働者には、10労働日の年次有給休暇が付与されます。

また、最初に年次有給休暇が付与された日からの「1年間の全労働日の8割以上出勤」した労働者に11労働日の年次有給休暇が付与されます。
その後同様に要件を満たすことにより、次の表1に示す日数が付与されます。(付与日数は最大20日まで)

条件を満たさなかった場合(出勤率が8割以下)その年は有給休暇を付与されませんが、翌年条件を満たせば1日プラスした日数が付与されます。
例:今年12日有給休暇をを付与されていたが病気をして、出勤率が8割に満たなかった場合、翌年は有給休暇はありません(本来は14日)が、その年に8割以上出勤すれば、その翌年(2年後)には16日が付与されます。(表1参照)

表1:一般の労働者(週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の所定労働日数が217日以上の労働者)の年次有給休暇付与日数

雇入れの日から起算した勤続期間 付与される休暇の日数
6か月 10
1年6か月 11
2年6か月 12
3年6か月 14
4年6か月 16
5年6か月 18
6年6か月以上 20

引用:政府発行資料 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html

パートやアルバイトなどの年次有給休暇

パートやアルバイトだからといって有給が無いと言うのは誤りです。パート労働者など、所定労働日数が少ない労働者についても所定の要件(上記の一般の労働者と同じ)を満たせば年次有給暇は付与されます。
ただし、上記の場合よりも少なく、次の表2のとおり比例的に付与されます。

表2:週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、又は1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者の年次有給休暇付与日数。

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

引用:政府発行資料 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html

年次有給休暇の時季

年次有給休暇は、労働者が請求する日に与えなければならないと労働基準法で定められています。使用者は、労働者が請求した日に年次有給休暇を与えることが事業に支障がある場合にのみ、他の日に年次有給休暇を与えることができますが、年次有給休暇を与えないことはできません。

出勤率の算定方法(出勤率が8割未満の年は有給を与えなくて良い)

年次有給休暇は「雇い入れの日から6か月継続して勤務」し「その期間の全労働日の8割以上出勤した」労働者に対して付与されるので、逆に言うと出勤率が8割未満の場合は有給休暇を与える必要が無い事になりますので、使用者は出勤率の算定を正しく理解し、労働者に不利にならないようにする必要があります。

出勤率=出勤した日数÷全労働日

出勤した日とは通常通り出勤して、勤務した日以外に遅刻早退した日も含みます。
全労働日とは、暦日数から所定休日を除いた日です。

また、以下の場合は、出勤したものと見なします。
① 業務上の負傷・疾病による療養のため休業した期間
② 産前産後の女性が産前産後の休業を取った期間
③ 育児休業または介護休業をした期間
④ 年次有給休暇を取得した日

以下の場合は全労働日から除外する必要があります。
① 使用者の責に帰すべき事由による休業の日
②正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日

有給休暇の取得率

2018年年末、エクスペディアが【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】発表しました。それによりますと日本の有給休暇取得率は50%。私の実感では、「結構多いな」という感じです。事実我が国の有休取得率の推移を見てみると昭和60年には51.6%その後バブル期には一時55%を超えるに至りましたが、バブル崩壊後の不況期になると50%を割り込むようになりました。その後景気回復期においても50%を超えることはありませんでした。ふたたび50%を超えたのが2018年となっています。(資料出所厚生労働省「就労条件総合調査」、「賃金労働時間制度等総合調査」(1999年まで) )

しかし、国際比較でみてみると最下位という結果でした。しかもワースト2のオーストラリア(取得率70%)と比較しても20%も劣っているのです。付与日数はまあまあ多いのに取得日数は10日間でこちらも、ワースト1位。取得出来ない利湯は職場環境にあるとの指摘が多く、事実労働者を対象にした調査でも「病気の時のために取っておく」、「他の人に迷惑がかかる」、「仕事が多すぎて休めない」、「休んだときの仕事をやってくれる人がいない」等です。また、業種や企業規模により取得率にはかなり差があります。

周囲に迷惑が掛かることを懸念して有給休暇を取れない労働者が多いということは、ほかのメンバーに負荷がかからない仕組みを作ることが必要かつ喫緊な課題ということをしめしています。一つの仕事を一人の人しかできないのでは無く複数人ができるようにし、交代制で担当できる様にしましょう。また、そもそも休暇を取れないほど業務が多いのであれば、その業務は本当に必要なのか見直すといったことも必要です。

割増賃金の計算方法

割増賃金,残業代

労働時間と割増賃金の意義

労働時間には2つの種類があります。就業規則や労働契約書に記載されている労働時間を所定労働時間といいます。一方、労基法32条では労働時間の上限を1日に付き8時間1週間に付き40時間に制限しています。これを法定労働時間と言います。使用者は、この法定労働時間内で自由に(所定)労働時間を定めることができます。法定労働時間を超える労働時間を就業規則などに定めていても無効とされ、法定労働時間が有効になります。(所定労働時間と法定労働時間)参照

横道にそれますが、休日についても割増賃金は発生するのですこし、休日についてお話ししましょう。休日にも法定休日とそうで無い休日があります。労基法35条に週1回の休日を与えることが規定されています。この休日を法定休日と呼びます。一方、そうでない休日とは、週休2日制における法定休日以外の休日を言います。具体的に言うと土日休みの会社における日曜日を法定休日と規定した場合、土曜日を法定休日以外の休日(法定外休日)と言います。

そして、同37条ではそれを超える労働に関しては割増賃金の支払いを義務づけています。この37条の規定は長時間労働を抑制し労働者の健康を守り家庭生活や社会生活をするためのものです。割増賃金の支払いは使用者に長時間労働の削減に取り組むように仕向けることを目的としています。

割増賃金の計算方法

割増賃金は以下の式により計算出来ます。

割増賃金額=時給×時間数×割増賃金率

時間数は日々の集計、割増率は法律によって定められています。では、時給はどのようにして算出するのでしょうか?時給というのですから、労働1時間あたりの賃金ということになりますが、賃金体系によって計算方法が異なります。

月給の場合

通常は月によって労働日数が異なるので、所定労働時間が異なり計算が煩雑になります。そこで、大体の事業所では1年間を平均した「1カ月間の平均所定労働時間」を用います。
給与の額は、1ヶ月の所定労働日数を勤務した場合に支給される給与・手当の合計です。

ここで、一般に基本給(職能給、職務給、年齢給など)、皆勤手当、食事手当、資格手当、運転手当、役職手当などは含まれますが、
次のものは除外されます。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われる給与、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる給与
(手当の名称にかかわらず、支給内容がどうかで判断します。支給額が均一である場合賃金とされる場合が多いです。自己判断せず、行政にご確認ください。)
参照「割増賃金の計算に含まれない賃金がある」

割増賃金単価を計算

1年間の所定労働日数を求める
1年間の所定労働日数は、所定休日の日数の合計を1年(365日、閏年は366日)の日数から引いて算出します。
所定休日とは、会社が決めた休日であって、必ずしも土日祝祭日とは限りません。
月平均所定労働時間を求める
1ヶ月平均の所定労働時間数=1日の所定労働時間×(上で求めた)1年間の所定労働日数÷12(1年間の月数)
時給を求める
時給=給与・手当の合計額÷1カ月平均の所定労働時間数
上で求めた時給に超過した時間数と労基法に定められた割増率を掛ければ割増賃金額が求められます。
割増賃金額=時給×時間数×割増賃金率

 

割増賃金率

労基法に定められている割増賃金率は

  • 時間外労働・・・・・25%以上(1ヶ月60時間を超えるときは50%以上(*1))
  • 休日労働・・・・・・35%以上
  • 深夜労働・・・・・・25%以上

*1中小企業については当分の間25%以上

おわかりのように「以上」なのでこれ以上支給しても良いのです。なかなか余計に出すところはありませんが。時間外労働が休日に行われた場合はそれぞれの割増率を加算して60%以上、深夜時間帯(午後10時から午前5時)の時間帯に行われた場合は50%以上の支払いになります。

出典「割増賃金の計算に含まれない賃金がある」

割増率が当分の間、変わらない中小企業の条件

小売業 資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者50人以下
サービス業 資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者100人以下
卸売業 資本金1億円以下、または、常時使用する労働者100人以下
その他の事業 資本金3億円以下、または、常時使用する労働者300人以下

計算例

算出条件

基本給  235,000円
皆勤手当   8,000円
家族手当  20,000円
通勤手当  15,000円

年間の所定休日 122日(労働カレンダーによる)
1日の所定労働時間8時間(就業規則による)
時間外賃金の割増率25%(就業規則による)

計算例

1ヶ月平均の所定労働時間数
=8時間×(365日−122日)÷12ヶ月
=162.0時間/月

時間数は、小数点以下1桁あるいは2桁までで良いと思います。実際は、就業規則・賃金規程の規定により確認してください。

1ヶ月の給与・手当の合計額(算定基礎額)
基本給:243,000円

通勤手当と家族手当は、算定基礎額に含めません。就業規則(賃金規定)で確認します。手当によっては算定に含めるものがあります。

1時間当たりの単価
243,000円/162.0時間=1500.0円

1時間当たりの時間外手当(通常の残業代の単価)
1500.0円×(100%+25%)=1875=1875円(1円未満4捨5入(原則)、規定により切り上げ可)

月平均所定労働時間を使えば、ここまでは1年間同じですから一度算出しておけば1年間使えます。

ここで計算した残業代単価に時間数を掛ければ、その月の残業代が出ます。
例えば、残業時間が25時間の場合は、次のような計算になります。---したはここから

  • 残業代単価1875円の場合 1875円×25時間=46,875円

 

時間給・日給の場合

時間給・日給の場合は、月給の場合より簡単です。

時間給の場合、時間単価=時間給です。

日給の場合は、時間単価は、日給の額を所定労働時間数で除して算出します。
日給が8000円、所定労働時間数が8時間であれば、時間単価は1000円です。

時間給の場合、時間給だからといって、1日8時間を越えて働いても同じ時給ではありません。割増賃金が発生します。
時給が1000円ならば、8時間を超えた場合の残業代は1000円×(100%+25%)=1250円/時です。
ここで注意が必要です。一日の労働時間8時間未満のパートさんの場合8時間を超えなければ残業ではありません。通常の賃金となります。

深夜になった場合は、割増率が更に+25%以上加算されます。

 休日労働の場合

休日に働いた場合は、労働すべてが時間外労働となります。

法定休日に残業した場合、割増率は35%(以上)。法定休日以外の休日労働の場合は割増率は25%(以上)となります。深夜業となる場合深夜割り増しの25%を加えたものになります。

 

法定の時間内の残業の場合

所定労働時間は、法定労働時間(一日に付き8時間、1週間に付き40時間)の範囲内で就業規則などに定められています。この所定労働時間が、法定労働時間である、1日8時間、1週間40時間より短く規定されている場合、所定労働時間分は超えているが、法定労働時間は超えていない労働が起こりえます。例えば、一日に6時間、週に30時間(6時間×5日)働く契約の労働者が2時間残業したような場合です。このような法定労働時間を超えてはいないが所定労働時間を超えた労働を「法定内残業」といいます。この場合、割増率は0%です。割り増しはありません。但し、雇用契約や就業規則に規定されている場合、その規定に従って割増賃金を計算します。
法定内残業であっても、深夜労働である場合には、25%の割増率を用いて、割増賃金を計算します。

法内残業の実際例

始業時間が9時の会社で12時から13時が休憩の場合所定労働時間が17時終了(1日の労働時間が7時間)の場合20時まで残業すると17時から18時は一日8時間の法定労働時間内なので「法定内残業」となり割増率は0です。18時から20時が残業時間となり25%増しの賃金を支払わなくてはなりません。

さて、この会社に勤めるAさんが病院によってから出社すると言うことで出社時間が11時になりました。この場合の残業時間はどうなるでしょうか「法定内」と「法定外」に分けて答えなさい。という問いにあなたはどう答えますか?

会社の規定の労働時間で計算すると上に書いているとおり2時間分の割増賃金を支払い2時間分(9時から11時)の遅刻控除をするのでしょうか?正解は労働開始から一日の労働時間をカウントするので11時から8時間は法定労働時間内となります。従って「法定内」1時間、「法定外」0時間となります。

 

変形労働時間制やフレックスタイム制の場合

変形労働時間制やフレックスタイム制の場合の割増賃金の計算はこちら

割増賃金(残業代)の計算に含まれない賃金がある

割り増し賃金の計算の基礎となる賃金とは

なぜ割増賃金を支払う必要があるのか

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第37条第1項・第4項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)労働基準法では労働時間は一日8時間、1週間に40時間以内と定められていますが、労使協定を結べばそれ以上の時間労働させることができます。その際に、罰則的な意味合いを含めて割増賃金の支払いが必要であると定めています。

事業主にとっては割増賃金(残業代)の支払いは大きな負担です。時間内にすべての作業が終われば不要な経費ですし、もし、割り増しで無くてもいいなら、25%も安くすみます。この25%の割り増しには罰則的な意味合いがあると上にも書きましたが、どういうことでしょうか?

それは、事業主に労働時間の削減を意識させようとしているのです。長時間労働は肉体的な疲労の蓄積だけでは無くメンタルヘルス面での弊害も指摘されています。長時間労働を抑制するために割増賃金の支払いを義務づけるのです。

割増賃金率

法律で定められている割増賃金率は

  • 時間外労働・・・・・25%以上(1ヶ月60時間を超えるときは50%以上(*1))
  • 休日労働・・・・・・35%以上
  • 深夜労働・・・・・・25%以上

*1中小企業については当分の間25%以上

働き方改革により中小企業であっても2023年4月1日以降は月60時間を超える時間外労働に対して50%以上の割増率となります。なおなお、割増賃金の未払いに関しては労基法119条が適用され6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。人手不足により長時間労働が慢性化している中小企業には厳しくなりますが、長時間労働を続けていては新規採用もままなりません。(令和元年(2019年)8月追記)

 

おわかりのように「以上」なのでこれ以上支給しても良いのです。なかなか余計に出すところはありませんが。時間外労働が休日に行われた場合はそれぞれの割増率を加算して60%以上、深夜時間帯(午後10時から午前5時)の時間帯に行われた場合は50%以上の支払いになります。

割増賃金の計算方法

割増賃金の額は次の計算式により算出します。

割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間数×割増賃金率

1時間あたりの賃金額は次のように計算します。

1時間あたりの賃金額=月の所定賃金額÷1ヶ月の所定労働時間

ここで

1ヶ月の所定労働時間=(365-所定休日数)×1日の所定労働時間÷12(原則)

各月の所定労働時間は労働日数などで変動します。そうすると割増賃金の計算の基礎となる所定労働時間を毎月計算しなければならず、面倒なので1年間を平均したものを計算上使用しています。なので正しくは月平均所定労働時間ということになります。なお、変形労働時間制を採用している場合などは原則通りには行きません。

割増賃金の基礎とならない手当

割増賃金に基礎となるのは所定労働時間の労働に対して支払われるものなので「労働と関係の無い手当」については算入しないことができます。(労働基準法第37条第5項、同施行規則第21条)下記の手当は限定列挙といい、ここにあげられているもの以外はすべて算入しなければなりません。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、1から5の手当については同じ名称であっても算入しないことができるものとできないものがあります。

 

 

後悔しない社労士の選び方

社会保険労務士

社会保険労務士とは?

社会保険労務士(社労士)は社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。労働保険・社会保険の手続きや人事労務管理の諸問題について、相談に乗ってもらえます。

社労士は個人レベルで社会保険労務士事務所を開業している場合が多数で、近年では社会保険労務士法人に所属している社労士もいます。比較的規模の大きい企業をターゲットとする社労士事務所は徐々に規模を拡大しないと生き残れない時代が近づいているようです。(企業側の要求が多岐にわたるため)しかし、一方では昔ながらの個人営業の事務所も数多く存在します。従業員数50人ぐらいまでの企業では事務手続きや基本的な課題に関する相談が多いので個人事務所の方が良い場合も多いと思います。また、規模の大きな事務所が必ずしも実力があるとは限らないのが悩ましいところです。

顧問社労士を選ぶときは、「ホームページなどを見て選ぶ」、「知り合い(同業の社長や税理士)の紹介で依頼する」という方が多いです。最近は紹介であっても事前にホームページをチェックする方がほとんどです。今時はほとんどの社労士がホームページを持っているのでまずチェックするのは重要だと思います。ホームページが見当たらない、あるいは、見るからに古い場合は現在活動していない場合もあるでしょう。逆に社労士の側から言えば定期的に更新、作り直しをした方がいいと思います。お客様との最初の接点になるのですから。

社会保険労務士の得意範囲を把握しよう

社会保険労務士は国家試験に合格しているとはいえ、業務範囲が幅広いため、そのすべてをカバーできるわけではありません。私もそうですが、すべてをこなせる場合なんて有りません。社労士同士で協力しあってやっているのが実情です。発展型が社労士法人といえるでしょう。

例えば、社会保険労務士の専門分野は大きくわけて、労働分野と社会保険(年金・医療・介護)分野があります。労働分野なら、労務管理に関する相談業務を中心に、手続き代行、コンサルティング業務(就業規則、人事制度など)となります。このほか、助成金申請や給与計算業務(ペイロール)をを積極的に行っている事務所もあります。

社会保険労務士によって、依頼できる内容やサービス料金が異なります。成果物のレベルも異なってきます。たとえば30万円の就業規則でもA社労士とB社労士では全く違ったものができあがってきます。どういったことを依頼したいのかなどをよく考え社労士を選ぶ必要があります。やはり、そういったことを考えると「紹介」は社労士の実力を担保する一つの方法なのかもしれません。ただ、紹介してくれた方の会社とあなたの会社が同じレベルの要求をしているかはわかりませんが・・・

本当に良い社労士に巡り会うまでは何回か委託替えをすることも仕方ないかもしれません。昔は、インターネットが無かったので一人の先生の情報しか得られませんでしたが、今ではネットを検索すればあらゆる社労士事務所の情報が出てきます。

社会保険労務士との相性も重要

事務所によって料金は異なります。サービス料金が高い・安いは確かに重要ですが、料金とサービス内容をチェックしましょう。同じ成果物ならば、料金は安い方がいいに決まっています。

最終的にはコミュニケーションの問題なので、相性も大事です。「話しやすい先生」というファクターは結構大事なのでは無いでしょうか?多くの事務所では初回の無料相談をもうけており、規模の大きい事務所ではセミナーなどを行ってる場合もあるので、それらに行ってみてから判断するといいでしょう。料金については、ホームページに料金表を提示してない場合は見積もりを取りましょう。気になる事務所が複数あれば相見積もりを取ってもいいでしょう。

私が考える良い社会保険労務士とは

よい社労士とは「会社のためになることなら耳の痛いことでもはっきりと言ってくれる社労士」です。事業主の方針と異なる意見が出された時それを上手に取り入れるなら労務トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。実際にトラブルになってから解決してくれる社労士はありがたいですが、未然に防いでくれる社労士はもっとありがたいです。労務トラブルによるモラールダウンを防ぐとこができます。

また、専門的なことがらをわかりやすく平易に説明するスキルをもっている社労士は良い「社会保険労務士」といって差し支えないと思います。

労働時間とそうで無いものの実際例

労働時間

労働時間になるもの

労働時間となるものは、労働基準法には「これが労働時間です。」という明示は無く判例により示されています。判例では「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働時間かどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれいるかどうかにより定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。」とされています。

すなわち、労働契約や就業規則に労働時間は9:00~18:00と定められていても、使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうかという事が問題になってきます。労働時間外でも使用者の指揮命令下にあれば労働時間と見なされます。

以下では、実際に労働時間に該当する作業について説明します。

始業前の準備、終業後の片付け

本来の業務の準備作業や後片付けについて、事業所内で行うことが使用者によって義務づけられている場合や現実に不可欠である場合には、指揮命令下に置かれたものとされ、労働基準法上の労働時間に該当すると判断しています。原則として使用者の使用者の個別的な指示や就業規則等により、使用者の指揮監督下で一定の作業が労働者に明確に義務付けられている場合、労働時間となります。

(詳細解説「作業準備時間は労働時間です」をみる→)

 

 

着替え

作業開始前の着替えの時間について、使用者から事業所内において行うことを義務づけられている場合などは、使用者の指揮命令下に置かれたものとされ、社会通念上必要と認められるものについては労働時間に該当すると判断しています。

使用者から義務付けられた作業服や保護具の着脱等に要した時間について、

労働者が就業を命じられた業務の準備行為と認めて、これを労働基準法上の労働時間としています(三菱重工長崎造船所事件 最高裁 平12.3.9)。

着替えに関しても次のページで解説しています。よろしかったらご覧ください。ここでのポイントも、何らかの形で使用者の管理監督下に置かれているかどうかになります。

(詳細解説「作業準備時間は労働時間です」をみる→)

 

手待ち時間

手待ち時間とは、使用者からの命令があればただちに業務に就くことができる態勢で待機している時間のことをいい、具体的には以下のような時間のことを指します。
労働基準法では、一定の時間を超えて働く労働者に対して、労働時間の途中に休憩時間を与えなければならないことが定められています。手待ち時間については、それが休憩時間なのか労働時間なのかという点が問題となります。

1.店員が顧客を待っている時間

過去の判例では、勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされている時間について、いわゆる手待ち時間であって休憩時間ではなく、労働時間に当たると判断しています。

2.夜間の仮眠時間

こちらも過去の判例で、「24時間勤務の途中に与えられる連続8時間の「仮眠時間」は、労働からの解放が保障された休憩時間とはいえず、実作業のない時間も含め、全体として使用者の指揮命令下にあるというべきであり、労働基準法上の労働時間に当たる」として、仮眠時間が労働時間であると認められています。

3.電話番の時間

昼休み中に電話番や来客対応をさせることについて、厚生労働省は「明らかに業務とみなされる」として、労働時間に含まれると示しています。

4.物品の運搬・運送

出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合は、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含むものと考えられます。

貨物取扱の事業場で貨物の積み込み係が貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合は、手待時間ですから労働時間に含むものと考えられます。

運転手が2名乗り込んで交互に運転にあたる場合に、運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠している場合は手待時間ですから、労働時間に含むものと考えられます。労働時間が8時間を越えれば、割増の残業代も支払わなければなりません。

 

(詳細解説「手待ち時間は労働時間」をみる→)

時間外労働の黙認

従業員の自己判断で残業をしても、事後承認が慣行となっている場合は、格別の理由がない限り時間外労働として扱わなければなりません。

勉強会・研修

勉強会や研修に参加している時間についても、労働時間として認められる場合があります。過去の判例では、労働者が月に1~2回程度、少なくとも20分以上を費やして開催される研修会に参加していた時間を時間外労働時間であると認め、会社に対して割増賃金を支払う義務があると判断しています。

勉強会や研修については、参加が義務づけられている・欠席による罰則などがある・出席しなければ業務に最低限度必要な知識が習得できない、といった場合には、労働時間として認められる可能性があるといえます。

参加が義務づけられている研修等は労働時間となります。

例えば、業務命令で休日に行われる合宿研修は、勤務扱いをしなければなりません。休日に労働させていることになるからです。研修終了後に振替休日を与えるか、休日労働として35%増しの割増賃金の支払いが必要となります。

安全衛生教育の時間

法に基づく安全衛生教育については、労働時間内に行うのを原則とします。労働時間と解されますので、法定労働時間外に行われた場合には時間外労働になり、割増賃金を支給しなければなりません。

健康診断

健康診断に関しては、厚生労働省が公式の見解を示しています。これによると、職種に関係なく定期的に行う「一般健康診断」は、業務遂行との直接の関連において行われるものではないことから、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきとしつつ、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいとされています。

なお、法定の有害業務に従事する労働者が受ける「特殊健康診断」は、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断であることから、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間に該当し、賃金の支払いが必要であるとされています。

始業前の朝礼

使用者の指揮命令によるか否かで判断されることになります。

朝礼で点呼をとったり、当日の仕事の流れを説明するような場合は強制参加であるため、労働時間となります。

強制ではないが、朝礼への参加状況が人事考課に関係する場合も労働時間と判断されます。

帰宅後の呼び出し

労働に中断があっても、1日につき8時間を超える場合は時間外労働になります。

そのための往復の通勤の時間は、労働基準法上は通常の通勤時間と同一のものとして労働時間には該当しないものと解されます。往復の通勤の時間賃金の支払いは不要です。

有給休暇中に緊急の呼び出しで出勤したという場合、原則、有給は取得しなかったものとして扱われ、通常の出勤日となります。賃金も労働時間に対して支払うことになります。

労働時間とみなされない時間

以下のような作業に要する時間については、労働時間とみなされないため注意が必要です。

通勤

通勤自体は働くために必要な作業となりますが、通勤時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としては判断されません。

タイムカードの打刻

事業場に入ってから、タイムカード等の置いてある所まで行くのに要する時間は、労働時間には入りません。(三晃印刷事件 東京地裁 平成9.03.13)

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間については、労働時間に含めるか否かは、「就業規則に定めがあればその定めに従い、その定めがない場合には職場慣行によって決めるのが妥当」(日野自動車工業事件 最高裁 昭59.10.18)とされています。作業するために不可欠なものであっても、働くための準備行為なので労働力そのものではないので、更衣時間については原則として労働時間に含めません。

朝の掃除、準備

従業員が自主的に掃除などをしている場合は、本人の自発的な行動とみなされ、労働時間にはなりません。

始業前の掃除やお湯を沸かしたりすることを命じられていたり、当番制によって事実上強制になっている場合で、黙示の業務命令があるとみなされた場合は労働時間となります。

始業10分前の出勤を指示された場合

「使用者の指揮命令下にあって労働力を提供している時間」にあたるかどうかにかかってきます。「実際に働いているかどうか」ということで、拘束力が弱く業務を行っていない場合は、指揮命令下にあって労働力を提供しているとは言えず、早出とみなされる可能性は低いと思われます。

朝礼、ミーティング等で、参加が義務づけられている場合には労働時間となり、早出として時間外手当を支払う必要があります。

始業前のラジオ体操

「参加は従業員に強く奨励されていたが、義務付けられていたということはできない」として、労働時間として認めなかった判例があります(住友電気工業事件 大阪地裁 昭58.8.25)。

休憩時間・始業・終業時刻の前後の自由時間

使用者の拘束下にありますが、労務提供のための指揮命令は受けておらず、労働から解放されているため、労働時間になりません。

自発的な残業

原則として、自発的に行なう残業については、労働時間として取り扱う必要はありません。残業は、使用者の業務命令があって初めて生ずるものだからです。

明確な業務命令がなかったとしても、残業を行なう労働者を黙認していた場合などは、黙示の指示があったものとして労働時間となります。

持ち帰り残業

持ち帰り残業とは、書類を自宅に持ち帰ったり、メールでデータを自宅のパソコンに送信しておいて、自宅で仕事(残業)を行なうことですが、自発的に行なう場合は原則として労働時間にはなりません。

作業後の入浴

労働安全衛生規則では、「事業者は身体または被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身もしくはうがいの設備、更衣設備または洗濯のための設備を設けなければならない」ことを定めています。ただし、入浴時間などについての規定はなく、入浴時間については使用者の指揮命令下にあるとはいえないと解されています。
厚生労働省の通知では、坑内労働者の入浴時間について、通常労働時間に算入されないと示されています。

一般健康診断の受診時間

従業員一般に対して行われる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないため、受診のために要した時間は労働時間として扱わなくても差し支えありません。

特定の有害な業務に従事する労働者について行われる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで実施されなければならない性格のものです。実施に要する時間は労働時間と解されます。

就業時間外の教育訓練

使用者が実施する教育に参加することについて、出席の強制がなく、自由参加のものであれば時間外労働にはなりません。このあたりのことを、就業規則には明確に定めておくとよいでしょう。

昇進・昇格試験を休日に実施した場合は、休日出勤にはなりません。報酬などの向上を目指すための昇格試験なので、労働時間とはみなされないのです。

受験しなかったときに給料の減額などの受講者にとって不利益な措置があるときは、労働時間とみなされます。

休日の接待ゴルフ

原則として休日労働とはなりません。

本人はプレーせず、コンペの準備や進行、送迎等の接待の任務をもって参加する担当者の場合は、それが使用者の命令によるものであり、かつ主たる業務として行なわれる限り労働時間となります。なお、開催が平日であれば、通常の労働時間として扱ってよいでしょう。

出張の移動時間

出張先への移動時間については通勤時間と同様に、その間は、会社の指揮・監督下にあるわけではなく、労働時間では無いとする見方が有力です。裁判例には、「出張の際の往復に要する時間は労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがって時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とするものがあります(横浜地裁判決昭和49年1月26日)。つまり、移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解されます。
ただし、一度会社に立寄ってから向かう場合や、出張先から会社へ戻る場合にあっては、その時間は労働時間にあたると一般的には解されています。たとえば、営業で取引先をまわる場合などが想定されるでしょう。
また、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含まれると考えます。上司が同行しての出張の場合にも、会社の指揮・監督下にあるとして、労働時間にあたると解されています。
なお、労働基準法38条の2で「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定されており、通勤途上による寄り道で、その時間の把握が困難な場合には、原則として所定労働時間(みなし時間)とし、時間外労働として扱わなくてもよいとされます。たとえば、弁護士の業務を例にとれば、朝裁判所に寄ってから事務所に行くという場合には、仮に就業開始時刻より早く裁判所に寄ったとしても、時間外労働と扱われないことになります。

出張中の休日に移動のため旅行する場合は、特段の指示がない限り労働時間に含める必要がないとされます(昭和23年3月17日 基発461 昭和33年2月13日 基発90号)。しかし、何らかの手当を支給するなどの方法で報いるのが良いと考えます。

自宅待機をさせた場合

場所的には自宅に拘束されるものの、その時間は自由に利用できます。事業場で使用者の指揮監督のもとに拘束される手待ち時間とは異なるものと考えられます。自宅待機の時間を「労働時間」とみなす必要はありません。

自宅待機について、賃金を支払いの定めはありません。しかし、休日に待機命令を行うことは、強制力をもって行うことには問題があり、労働時間とはならず、その手当も宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当と思われます。
休日に業務遂行を前提として会社に「待機」させる場合は、待機時間は労働時間となりますが、非常のときに備えて待機するだけのときは「日直」と扱うこともできます。宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当でしょう。

労働契約の労働時間が実態とかけ離れている。

雇用契約書は労働関係の基礎となる者です。

雇用契約の問題

そもそも、求人に応募して、お互いに労働条件について話し合い、確認して、合意した場合に初めて、働き始めるのですが、その際には「労働契約書」を作成する必要があります。労働基準法では、労働契約の締結に当たり「書面で明示するべき事項」が定められています。書面が交付されないのは法律違反になります。

そうは言っても、小さな会社の場合は口頭だけで済ませてしまい働き始めると言ったことは普通にあります。こうした場合「約束が違う」などトラブルの元です。しかも明示された労働条件が事実と異なる場合労働者は一方的に労働契約を打ち切ることができる。といっているホームページも有りますが、そうした場合、労働者の暮らしはどうするのでしょうか?とても現実的な選択とは思えません。事業主の側としても余計なストレスを生ずるだけです。必ず書面を交付し、それを守るようにしましょう。

実際に労働時間が雇用契約書と異なる場合の扱い

実際の労働時間が労働基準法に則っていて、賃金もきちんと支払われているのであれば大きな問題はありません。雇用契約書を事実に合わせて修正しましょう。しかし、実際の労働時間(残業をしている場合など)に基づいた給与計算を行わずに、給与計算だけ就業規則の労働時間(法定労働時間通り)に基づいていたりすると、多くの場合「不払い残業代」の問題を生じます。このような場合労働時間によっては変形労働時間制を使用することにより、法定労働時間内に収まるケースもあるので検討してみる必要があるでしょう。但し、これらの変形労働時間制は労使協定の締結など一手間かかるのが難点ですし、運用がまずければかえって問題を増幅することにもなりかねません。まずは、監督署あるいはお近くの社労士にご相談してみてはいかがでしょうか?

注意するべきケース

正社員の労働時間の3/4時間・・・これは社会保険に加入するかしないかがかかわってきます。このように必ず守らなければいけない場合があります。36協定を締結しておらず、残業なしの会社では週40時間を超えてはいけません。などです。

 

 

労働時間の短い労働者の社会保険と有給休暇

短時間労働者の特徴と言えば社会保険に加入できないことです。

短時間労働者の社会保険

労働時間が通常の労働者と比べて短い者の社会保険の加入条件は次のようになっています。

雇用保険 週所定労働時間が20時間以上で強制加入。

社会保険(健康保険・厚生年金) 通常の労働者の4分の3以上で強制加入。通常の労働者が週40時間なら30時間以上。35時間なら25.5時間以上で強制加入となります。

労災保険 労働時間に関係なく強制加入(適用除外に該当する場合を除く)

短時間労働者の有給休暇

短時間労働者の場合、有給休暇は比例付与となります。

週の労働時間が30時間未満で所定労働日数が週4日以下(年間所定労働日数の場合は216日以下)の短時間労働者は、その所定労働日数によって、以下のような付与日数が決められています。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

例えば、週3日のパートであれば、雇入れ時から半年(0.5年)の時点で5日の有給休暇を付与されます。

なお、パートであっても1週間の所定労働時間が30時間以上あるいは、1週間の所定労働日数が5日以上、または1年間の所定労働日数が217日以上であれば、正社員と同じ有給休暇が付与されます。ここが大事です、たとえ週4日の勤務でも週の労働時間が30時間以上なら正社員と同じ日数が付与されるのです。

パートタイマー(短時間労働者)への社会保険(健保・厚生年金)適用の拡大

平成28年10月より、週の所定労働時間が20時間以上の者にまで適用されることとなりました。

 

 短時間労働者の各保険の適用表

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 週20時間未満
厚生年金保険    〇     ◎
健康保険    〇     ◎
雇用保険    〇     〇
労災保険    〇     〇     〇

*  ◎  新規で社会保険の適用になる短時間労働者

以下のすべてに当てはまる者をいいます。

1.週所定労働時間が20時間以上

2.年収が106万円以上

3.月収が88,000円以上

4.雇用期間が1年以上

5.企業規模が従業員501名以上(*平成31年9月30日までの時限措置)

労働者の保険料負担

各種保険料率 新制度導入前 新制度導入後
厚生年金保険料率 0% 18.3%
健康保険、介護保険料率 0% 12%

ということで一気に30%超の負担増(事業主負担15%超の負担増)になります。社会保険加入はいいけれど結構大変です。しかし、負担有るところ給付ありです。特に年金は将来かならず、「ああ、あのときは入れて良かった」と思うはずです。

管理監督者や裁量労働制の労働者の労働時間管理

管理監督者、完全月給制の者、裁量労働制の適用者などは労働時間の管理をしなくても良いのか

働き方改革により労働時間の把握は義務化へ

労働安全衛生法の施行規則(安衛則)の改正で労働時間の適正把握の法制化が令和元年4月より実施されました。

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を守り快適な作業環境を確保することを目的とした法律で、監督署の立ち入り調査では必ず確認や指導が行われる主要法令の一つです。この労働安全衛生法に、「労働時間の把握」が使用者の義務であると明記されました。

厚生労働省発行のガイドラインによると

現状(2018年6月現在)では、厚生労働省発行の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、主に以下のポイントが明記されています。

・使用者(事業主)は労働者の働いた時間を把握する

・参加義務のある研修や教育訓練、業務に必要な学習も全て「労働時間」とみなす

・使用者は労働者の仕事の始まりと終わりの時間を明確に把握・記録する

・機器やシステム使っての”客観的な記録”が基礎。労働者自らも確認をする

・自己申告制にする場合はガイドライン遵守及び十分な説明を行う

・自己申告とシステムで記録された労働時間に大きな差が出た場合は実態調査を実施する

・使用者は労働者ごとに労働時間・日数、時間外、休日、深夜労働の時間を適正に記録する

こうしてみると、当然のことばかりと思う方もいらっしゃるかもしれません。それにもかかわらず、サービス残業や持ち帰り残業などが横行しています。

労働時間の把握はなぜ必要

労働時間の適正把握は、賃金計算トラブルやサービス残業(未払い残業代)の予防・解決の面からも必要ですが、長時間労働による健康障害の防止の観点からも大変重要です。

例えば、「管理監督者」は労働基準法第41条で労働時間、休日及び休憩に関する規定の適用対象外となっており、管理監督者が残業を行なっても労基法上の時間外労働手当を支払う義務は無く、逆に遅刻・早退しても賃金控除されることはありません。その一方で長時間労働が続けば健康が害される可能性が高まります。そうしたリスクを避ける為、毎日の厳格な出退勤時刻の管理は出来ませんが、通常どれぐらいの勤務時間になっているのかといった勤務実態の掌握や必要に応じた指導は事業者として当然に行なわなければならないということです。

万が一、過労死や過労自殺が生じた場合には、管理監督者であることを理由に企業責任が免れることが出来るわけではなく、多額の損害賠償につながります。「労働基準法で労働時間に関する規定の適用対象外である」からといって「長時間労働による健康障害防止の必要性」が無いわけでは無いのです。

全ての労働者について、少なくともタイムカードなどの客観的な記録に基づく労働時間管理を行うようにしましょう。

 

健康診断の種類と労働時間

健康診断には2種類ある

健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断があります。一般健康診断とは、職種に関係なく、労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。一般健康診断は労働者の健康の保持増進を目的として行われ、労働とは直接の関係はありませんが、事業主にその実施義務が課せられていることからできる限り所定労働時間に行うことが望ましく、特殊健康診断は、労働内容と密接な関係があることから所定労働時間内に行わなければなりませんし、万が一所定労働時間内に行われなかったときは賃金(割増賃金)が支払われなければなりません。

1 一般健康診断(安衛法第66条第1項)

安衛法に規定されている健康診断で、労働者の一般的な健康診断です。雇入れ時の健康診断や、1年以内に1回以上の受診が必要な定期健康診断は、この一般健康診断に分類されます。40才以上の方に行う健康診断と特定健診(いわゆるメタボ健診)の違いは視力・聴力・胸部X線・心電図および貧血の検査が特定健診にはありません。従って、特定健診を自分で受けたからといって、その結果を提出しても会社が行う健康診断を受けなくて良いと言うことにはなりません。

2特殊健康診断

2-1 有害業務の特殊健康診断(法第66条第2項)

安衛法やじん肺法に規定されている特定の有害業務に従事する労働者を対象とする健康診断です。労働安全衛生の観点から行われるもので、有害業務が健康に与える影響を調べたり確認したりします。

2-2 有害業務の歯科医師による健康診断(法第66条第3項)

歯またはその支持組織に有害なガス、蒸気、粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者を対象に実施します。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りん等のガスを発生する場所における業務を言う。

2-3 通達による特殊健康診断

業務の種類によって、法令に規定されている健康診断とは別の健康診断として行政から受診を勧奨されているものです。強制的なものではありませんが、必要な人には受診させておくべきです。

一般財団法人全日本労働福祉協会のHPに詳しく掲載されています。

健康診断は業務時間に行うべきか?

これらの健康診断を労働時間内に受診するべきなのか、あるいは、労働時間外に受診すべきか?という点について考えてみましょう。それには、次のような通達が出ています。

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払い(昭和47年9月18日、基発第602号)

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般を対象とする一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施を義務づけたものであり、業務遂行との関連において行われるものでは無いので、その受診に要した時間については、当然に事業者の負担するべきものではなく、労使協議して決めるべきものであるが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠な条件であることを考えるとその受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが、望ましい。

特殊健康診断は事業の遂行に絡んで当然に実施しなければならない性格のものでありそれは所定労働時間内に行われることを原則とする。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割り増し賃金を支払わなければならない。

健康診断に要した時間の考え方

この通達を簡単に言い換えてみます。

1 一般健康診断

一般健康診断は、特殊健康診断とは異なり、すべての会社ですべての労働者を対象(パート等を除く)に行われるものです。雇入れ時健康診断と定期健康診断が代表的なものです。一般健康診断は、使用者に実施義務があります。健康に労働を行うために行われます。

しかし、業務との直接の関連はないので健康診断を業務時間内に実施するか、業務時間外にするかはそれぞれの会社ごとに決めることになっています。「当然には事業者が負担すべきものではなく」というのは、会社が賃金を支払わなければいけないと決まっているわけでは無い。しかし、会社には健康診断の実施義務があるので、業務時間内に実施する、もしくは賃金を支払うことが適当だと思います。また、従業員の健康を確保することは、会社を運営するにも必要なことですから、それに要した時間に賃金を払う方が適切と思います。

2 特殊健康診断

危険または有害な業務として法で定められている職業には特殊健康診断が必要で、事業主の責任で当然に実施すべきものです。

一般健康診断とは違い、特殊健康診断は有害とされる業務を行う上で必要な健康診断なので、業務の一環として所定労働時間内に行うことが原則です。ですから、業務時間外に行った場合には、賃金(割増賃金)の支払いが必要です。

社内旅行・運動会などの社内行事の労働時間管理

社内の行事の参加を強制するとそれは労働になります。

社内行事が労働時間となるかどうかについては、「使用者の指揮命令下」に有るかどうかが問題となり、完全自由参加であり不参加の場合にも何らペナルティがない場合は労働にはなりません。

一方、事実上強制となる社内行事や社内旅行の場合、それは労働に当たり、その時間は労働時間となり賃金が発生します。こうした行事は業務のある平日ではなく休日に行われることが多いと思われるので、時間外手当や休日手当にも注意が必要です。

なぜ、社内行事への参加を強制できるのか

使用者には労働契約に付随して「業務命令権」という権利があり、この「業務命令権」の一環とし社内行事への「参加強制」しても違法ではありませんし、従業員はそれに従う必要があります。当然それに対しては賃金(時間外や休日であれば割増賃金を含む)が支払われます。

同様に考えて、業務時間外の社内行事に対しては参加強制を、適法に行うためには業務の一環(すなわち「残業」)として行う必要があります。

参加したくないにもかかわらず、社内行事やイベントに参加を強制されたのであれば、これはすなわち、会社の指揮監督下に置かれていることになります。したがって、参加強制をされた社内行事は、「労働時間」です。参加強制されていなければそれは労働時間ではありません。参加せずともいいのです。

表向きには「自由参加」としていても強制と取られるときもあるぞ!参加強制の例

  • 会社からの命令で、絶対に参加するよう言われている。(直接的強制)
  • 「自由参加」だが、不参加だと賃金を控除されたり、パワハラや職場いじめの対象になる。また、「協調性がない」といわれ低い人事評価をされる。(間接的強制)
  • 社内行事やイベントの幹事、実行委員会などに指名され、事実上出席せざるを得なくなる。(間接的強制)

建前だけ「自由参加」としていても強制参加と見なされる場合があることに注意しましょう。参加を強制した場合には業務と見なされ賃金が発生します。

在宅勤務の労働時間管理に関する私見

在宅勤務の労働時間管理

在宅勤務に関してはネットに接続できる環境さえあれば、十分可能でパソコンやテレビ電話により会社に出勤するのと同様の作業環境を整えられる企業は多数存在します。後は在宅勤務する側の資質の問題であると考えられるので「見なし労働時間」を適用するのは事業所外勤務の場合と同様に芳しくは無いと思います。あくまで私の意見であって皆さんの会社で適用するのは自由です(しかし、その後問題が発生する可能性は十分あると思います)。参考までに在宅ワークに見なし労働時間制を適用する場合の要件は次のように定められています。

在宅労働のみなし労働時間制(テレワークQ&A(厚生労働省発行より)

①労働者が事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難な場合には、みなし時間により労働時間を計算できる場合があります。
②みなしの対象となるのは所定労働時間が原則ですが、所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合には、そのような通常必要となる時間がみなし時間となります一定の要件とは次の3点の要件を全て満たした場合です。

① テレワークが、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
② テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと
・「パソコンが使用者の指示」とは、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することについて、使用者から認められていない状態をいいます。
・「通信可能な状態」とは、使用者が労働者に対して、パソコンなどの情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態、すなわち、労働者が具体的な指示に備えて待機している手待ち状態で待機しているか、または、待機しつつ実作業を行っている状態をいいます。
これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで、従業員がパソコンから離れることが自由である場合などは、「通信可能な状態」には該当しません。

③ テレワークが、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
・「随時使用者の具体的な指示に基づいて行われる」には、例えば、テレワークの目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、これらの基本的事項について変更を指示することは含まれません。

古い先生の指導では(先生が古いという意味では無く古い時代の指導という意味です)裁量労働制と見なし労働時間制を組み合わせればいいというものが多数見受けられますが、それらは、最近のIT分野での発達が考慮されていません。本人への信頼を前提に、「 電話、メール等で常時使用者の指揮命令を受けながら労働させ、業務記録を記録、報告させる 」 というのが、最新の運用方法であると思われます。言い換えれば、本人が信用できないならば、在宅勤務制は採用するべきではないという事になります。在宅勤務でも残業時間を含めた労働時間を把握することは必要です。安全衛生の観点からも必ず把握するようにしてください